ソテツ科

ソテツ科 (Cycadaceae)

ソテツ科は、裸子植物であるソテツ綱に属する科の一つであり、現生種としてはソテツ属（Cycas）のみを含みます。その特徴的な形態と生態から、観賞用としても利用されています。

形態と特徴

ソテツ科の植物は基本的に常緑樹であり、外観はヤシの木に似ています。幹は太い円柱状で、地中に埋まっているものから高さ12メートルに達するものまで存在します。幹の内部は柔らかい髄が発達しており、表面は葉の基部が残った鱗状の構造で覆われています。また、特殊な根であるサンゴ状根を形成し、その内部には窒素固定を行うシアノバクテリアが共生しています。このシアノバクテリアは、ソテツが持つ毒の生成にも関与していると考えられています。

葉は通常、1回羽状複葉ですが、まれに2-3回羽状複葉となることもあります。多数の葉が茎の頂点にらせん状に密生し、幼葉では小葉が内側に巻き込まれています。小葉は線形で、葉脈は1本のみ。この点が、他のソテツ類（ザミア科）との大きな違いです。

生殖

ソテツ科の植物は雌雄異株です。雄株は、多数の小胞子葉が密集した卵形または円柱形の「雄花」（小胞子嚢穂）を茎頂に形成します。小胞子葉の裏面には、花粉嚢が多数密生しています。雌株は、茎頂に大胞子葉がらせん状に密生し、ドーム状の塊（「雌花」、大胞子葉群）を形成します。受粉後、種子は卵形、円形、楕円形など多様な形状をとり、種皮は赤色、黄色、緑色などの多肉質の外層、木質の中層、膜質の内層に分化しています。

分布と生態

ソテツ科の植物は、東アフリカ、マダガスカル、南アジア、東アジア南部、東南アジア、オーストラリア北部、ポリネシアの熱帯から亜熱帯地域に広く分布しています。海岸沿いの低地から内陸の山地まで、多様な環境に適応しており、石灰岩地に生育するものも多く見られます。

ソテツは、昆虫や風によって花粉が媒介されることが知られています。種子の種皮外層は多肉質で色鮮やかなため、動物によって食べられ、運ばれることで種子散布が行われると考えられています。ナンヨウソテツのように、種子が海流によって散布される種も存在します。

保全状況

国際自然保護連合（IUCN）のレッドリストでは、ソテツ属の多くの種が絶滅の危機に瀕していると評価されています。主な原因は、農業や開発による生息地の破壊、園芸目的の違法な採取、気候変動などです。ソテツ科の全種は、ワシントン条約の附属書II類に指定されており、国際的な取引が規制されています。

人間との関わり

ソテツは、観賞用として世界中の温暖な地域で栽培されています。また、幹から抽出されるデンプンは食用に利用されることがありますが、有毒な成分（サイカシン、BMAA）を含むため、適切な処理が必要です。グアム島で発生する筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン認知症複合 (Guam ALS/PDC) の原因として、ソテツ属の植物が関与している可能性が指摘されています。

ソテツから得られたデンプンは、粥や味噌、アルコール飲料などに利用されることがあります。また、種子や葉は、民間薬として利用されることもあります。

分類

ソテツ属は、1753年にリンネによって記載された属であり、属名の Cycas は、ギリシア語の koikas （ドームヤシを指す言葉）に由来すると考えられています。ソテツ属は、現生ソテツ類の中で最初に他の属と分かれたグループであり、小葉の葉脈が分枝しないこと、雌性生殖器として大胞子葉が集まっているだけで明瞭な大胞子嚢穂を形成しないことなどが特徴です。現在、ソテツ属には約120種が知られており、形態的特徴に基づいて6つの節に分類されています。分子系統学的研究からも、この分類体系が支持されています。

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