オーギュスト・ペレ

オーギュスト・ペレ（Auguste Perret, 1874年2月12日 - 1954年2月25日）は、フランスの建築家であり、鉄筋コンクリート造の技術を芸術の域にまで高めた人物として知られています。彼は「コンクリートの父」とも呼ばれ、その革新的な建築手法は、後のモダニズム[[建築]]に大きな影響を与えました。

生涯と業績

オーギュスト・ペレは、1874年にベルギーのイクセルで、裕福な建設業者の家庭に生まれました。兄弟には、同じく建築家となったギュスターヴとクロードがいます。特にギュスターヴはオーギュストの事務所で共に働き、彼の建築活動を支えました。パリのエコール・デ・ボザールに入学し、数々の賞を受賞しましたが、中退して建築実務の道に進みました。

在学中の1890年には最初の建築設計を手掛け、その後、兄弟と共に父の建設会社を継承します。当時、まだ新しい建築材料であった鉄筋コンクリートに着目し、1903年にはギュスターヴと共にパリ16区に「フランクリン街のアパートメント」を完成させました。これは複数階を持つ鉄筋コンクリート建築の初期の成功例であり、彼らはこれを機に鉄筋コンクリート設計専門の事務所を立ち上げました。

ペレの建築は、古典的なシンメトリーと鉄筋コンクリート構造の融合が特徴です。代表作であるノートルダム・デュ・ランシー（ランシーの教会堂）では、ゴシック建築の空間構成と近代合理主義的な直線的なデザインが組み合わされています。彼は、コンクリートを石材よりも優れた材料と捉え、その造形性を追求しました。彼の作品には、コンクリートをそのまま仕上げとする「打ち放し」が多用され、プレキャストコンクリートの実験的な利用も多く見られます。これらの試みは、ル・コルビュジエやヴァルター・グロピウスといった、後の建築家たちに大きな影響を与えました。ペレの事務所からは、若き日のル・コルビュジエやベドジフ・フォイエルシュタイン（後に来日し、アントニン・レーモンドと共同で聖路加国際病院などを設計）などの著名な建築家を輩出しています。

また、ペレは鉄筋コンクリート構造とギリシア建築や日本建築から影響を受けたフレーム構造との関連性に着目し、古典的でありながらも近代的なデザインを追求しました。第二次世界大戦後には、ノルマンディー上陸作戦で破壊されたル・アーヴルの再建を主導し、プレハブ工法の効果的な利用、モデュール（寸法基準）の機能的な活用、そしてコンクリート構造の革新的な使用を通じて、都市の復興に大きく貢献しました。ル・アーヴル市街は、その都市計画と建築技術が高く評価され、世界遺産に登録されています。

1954年、パリ16区の自宅で死去しました。その建物は、現在、国際建築家連合の事務局として使用されています。

主な作品

フランクリン街25番地のアパート（1903年、パリ16区）: アール・ヌーヴォー調の鉄筋コンクリート造による最初期のモダニズム[[建築]]。
ポンテュ街51番地のガレージ（1906年、パリ8区、現存しない）: 鉄筋コンクリートを用いた初期のガレージ建築。

ペレの遺産

オーギュスト・ペレの建築は、鉄筋コンクリートの可能性を最大限に引き出し、20世紀の建築に大きな影響を与えました。彼の革新的な技術とデザインの哲学は、今もなお多くの建築家たちに受け継がれています。彼の作品は、技術的な革新だけでなく、芸術的な美しさも兼ね備えており、その遺産は建築史において重要な位置を占めています。

参考文献

ケネス・フランプトン『テクトニック・カルチャー』（松畑強+山本想太郎訳、TOTO出版、2002）

関連項目

モダニズム[[建築]]

門下生・弟子

ル・コルビュジエ
バーソルド・リュベトキン - 門下生。作品に、ロンドンハーリンゲイ区ハイゲートの集合住宅ハイポイントⅠ (en) 等が知られている。

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