オーストラリアのクリスマス

オーストラリアのクリスマス：夏のクリスマスの伝統と独自性

オーストラリアのクリスマスは、北半球とは対照的に夏の盛りに祝われます。そのため、イギリス、アイルランド、アメリカ、カナダといった国のクリスマスの伝統と多くの共通点を持つ一方、南半球特有の要素も織り交ぜた、独特の文化が形成されています。

共通するクリスマスの伝統

オーストラリアのクリスマスでは、クリスマスツリーを飾り付けることが中心的な習慣です。11月頃から街中や家々が電飾やオーナメントで彩られ始め、クリスマスに近づくにつれてその華やかさは増していきます。多くの家庭では、クリスマスツリー、サンタクロース、トナカイなどのモチーフを用いた、手の込んだ飾り付けが施されます。特に、日没が遅い夏期には、これらのイルミネーションが長く楽しめるため、夜間のドライブや散歩で楽しむ人々も多いです。

職場ではクリスマス・イブを前にクリスマスパーティーが開かれることが多く、年末年始の休暇に入る前に同僚と交流する機会となっています。このパーティーは、クリスマスそのものよりも、年末の集まりとしての意味合いが強いのが特徴です。学校や大学なども夏季休暇に入り、クリスマス前の週から休暇となるケースが多いです。

子供たちは、サンタクロースがクリスマスイブの夜にプレゼントを持って訪れ、暖炉のそばに置かれた靴下やストッキングの中にプレゼントを入れてくれると教えられています。暖炉がない家では、おもちゃの暖炉を用意することもあります。サンタクロースへの感謝として、クッキーやミルク、そしてトナカイのためのニンジンを用意するのも一般的な習慣です。

クリスマスの食事は、伝統的なローストターキーやハム、サラダ、ロースト野菜などを中心に構成されますが、夏の気候を考慮して、新鮮なシーフードや地元産の食材を使った冷たい料理を取り入れる家庭も増えています。デザートも、プラムプディングやミンスパイといった伝統的なものと、パブロバや新鮮なフルーツなどを組み合わせたオーストラリアらしいものが共存しています。

クリスマスソングも、マイケル・ブーブレやマライア・キャリーといった定番アーティストの曲が人気です。

オーストラリア独自のクリスマスの伝統

オーストラリア独自の要素としては、サンタクロースの描写が挙げられます。オーストラリア人作家の中には、サンタクロースをアクーブラ帽をかぶり、ビーチサンダルを履き、カンガルーが引くユーコンに乗ってやってくる、といった風変わりな描写をする人もいます。また、オーストラリア発祥のクリスマスソングも存在しますが、主流を占めるまでには至っていません。

オーストラリアでは、クリスマスカードを贈り合う習慣も広く浸透しています。クリスマスカード用の切手は通常の郵便料金よりも安く設定されており、カードのみを送る場合は封筒に「card only」と明記する必要があります。

クリスマス当日と元旦は祝日ですが、ボクシングデー（12月26日）の扱いは州によって異なります。南オーストラリア州ではボクシングデーは祝日ではありませんが、「布告日」と呼ばれる祝日が設定されており、事実上、他の州と同様の休暇体制となっています。

各州のクリスマスイベント

ニューサウスウェールズ州では、シドニーのキャロルズ・イン・ザ・ドメインやボンダイビーチでのクリスマスイベントが有名です。南オーストラリア州ではアデレード・クリスマス・ページェントという大規模なパレードが開催され、毎年40万人以上の観客を集めています。ビクトリア州では、「キャロルス・バイ・キャンドルライト」という、ロウソクの灯りでキャロルを歌う大規模なイベントがテレビ中継されるなど、新たな伝統として定着しています。西オーストラリア州のパースでは、クリスマス・ライト・トレイルというイルミネーションイベントが開催されています。

このように、オーストラリアのクリスマスは、伝統的な要素とオーストラリア独自の文化が融合した、独特の祝祭となっています。地理的な条件や歴史的背景が色濃く反映されたクリスマス文化は、オーストラリアの多様な魅力を象徴する一つと言えるでしょう。

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