オーストラリア・グループ

オーストラリア・グループ（AG）は、1984年に発生したイラクによる化学兵器使用を契機として、1985年に設立された国際的な枠組みです。化学兵器や生物兵器の拡散を防ぐため、加盟国による輸出管理の強化を目的としています。当初は15カ国でしたが、2018年にはインドが加わり、現在は43カ国、そして欧州委員会が参加しています。オーストラリアが中心となって設立されたことから、この名称が付けられました。事務局はオーストラリアが担当しています。

設立当初、加盟国間では、輸出管理の対象とする化学物質の種類について認識の相違がありました。しかし、その後、共通認識を形成し、現在では化学兵器禁止条約では規制されていないものの、化学兵器の製造に利用できる可能性のある87種類の化合物について、輸出管理の統一リストを共有しています。さらに、AGは、化学兵器や関連部品の製造技術についても輸出管理の対象とし、ライセンスや輸出管理の標準化を推進しています。

2002年には、輸出管理の強化策として2つの重要な措置が導入されました。1つ目は「抜け駆け禁止」です。ある加盟国が特定の国への輸出を拒否している場合、他の加盟国はその国への輸出を検討する際には、事前に拒否した加盟国と協議を行うことが義務付けられました。これにより、輸出規制の抜け穴を防止する効果があります。2つ目は「キャッチオール」条項です。これは、AGの管理リストに掲載されていない物質であっても、化学兵器や生物兵器プログラムで使用される可能性のある物質の輸出を加盟国が停止することを求めるものです。

AGの加盟国は、毎年フランスのパリで会合を開き、輸出管理体制の強化や新たな脅威への対応などを協議しています。加盟国は、多様な地域から構成されており、その中には、欧州委員会、EU加盟国、北米、アジア、南米などの国々が含まれています。

AGの活動は、国際社会における化学兵器・生物兵器の拡散防止に重要な役割を果たしています。輸出管理のリストや規制の標準化は、これらの兵器の原材料や技術の不正な取得を困難にすることに貢献しています。また、加盟国間の情報共有や協力体制の強化は、新たな脅威への迅速な対応を可能にしています。しかしながら、技術開発や新たな化学物質の登場など、AGが常に直面している課題も存在します。AGは、これらの課題に対処するために、継続的な努力を続けていく必要があります。

今後のAGの活動においては、新たな脅威への対応、新たな技術開発への対応、そして国際協調のさらなる強化が重要になってきます。グローバルな連携強化が、化学兵器・生物兵器の拡散防止という共通目標達成のために不可欠だからです。AGは、これからも国際社会における安全保障に大きく貢献していくでしょう。

もう一度検索