輸出管理

輸出管理とは

輸出管理とは、国際的な平和と安全の維持を目的として、貨物や技術の輸出を規制する制度です。これは、武器や軍事転用可能な物資が不適切な国や組織に渡るのを防ぐための重要な措置です。

輸出管理の区分

輸出管理は大きく分けて、以下の二つに区分されます。

安全保障貿易管理: 武器や軍事転用可能な貨物・技術の輸出規制。
非安全保障分野の輸出管理: 国内需要物資の確保、国際協定等に基づく取引禁止貨物、知的財産権侵害物品などの輸出規制。

歴史

輸出管理の歴史は古く、アメリカでは独立の頃から行われてきました。現代の輸出管理体制は、1917年のアメリカの対敵通商法や1939年のイギリスの輸出入関税権（防衛）法にまで遡ることができます。特に重要な法律は、1940年のアメリカ輸出管理法で、戦前の日本への資源の出荷制限を目的としていました。

安全保障貿易管理

安全保障貿易管理は、国際的な平和と安全の維持を目的として、武器や軍事転用可能な貨物・技術の輸出を規制する制度です。これは、大量破壊兵器や通常兵器の過剰な蓄積を防ぐための重要な措置です。

国際輸出管理レジーム

大量破壊兵器の開発や製造を意図する国家やテロリストに対し、必要な材料や技術の提供を妨害することが安全保障上重要です。そのため、国際輸出管理レジーム（MECR）という国際的な紳士協定があり、大量破壊兵器原料や関連技術の供給能力を持つ国々が協力して不拡散を目指しています。

安全保障貿易管理の基本概念

安全保障[貿易]]管理の基本概念は、自国または同盟諸国の安全保障上の利益を確保するために、敵対勢力への利敵行為となりうる民間[[貿易]を管理するという考えに基づいています。これは、冷戦下のココム規制（対共産圏輸出統制委員会）に端を発しています。規制品目や対象国は、国際情勢や国家間のパワーバランスによって変更されることがあります。

貨物・技術の分類

規制対象となる貨物・技術は、各国がそれぞれリストを作成しています。例えば、アメリカでは輸出規制品目分類番号（ECCN）やインドのSCOMETリスト、日本では経済産業省（METI）のリストなどがあります。

貨物や技術は、「軍事用に設計または改造されたもの」や「デュアルユース」（民生品として設計されているが軍事転用も可能なもの）などに分類され、輸出規制の対象となるかどうかが判断されます。ソフトウェアや技術は、無形のものとみなされることが多く、暗号化技術やレーザー装置など、用途によって分類されることもあります。

輸出先

各国は、国際関係に応じて異なる輸出規制を行っています。貿易協定を結んでいる国やグループには、特定の物品にはライセンスが不要な場合があります。しかし、制裁を受けている国やライセンスが必要な国、記録保持が必要な国など、輸出先によって制限が異なります。また、物品の最終消費者や「ブローカー」についても、同様の制限が適用されることがあります。

ライセンス（輸出許可）

輸出を希望する品目については、輸出先ごとに「ライセンス不要（NLR）」や「ライセンス必要」などの扱いが異なります。ライセンスが必要な場合は、通常、エンドユーザーからの申告が必要です。これは、EUU、EUS、または最終用途証明書と呼ばれ、使用目的が記載されています。その後、ライセンスは輸出者の管轄区域にある適切な政府部門から取得することができます。

日本の安全保障貿易管理

日本の安全保障貿易管理は、経済産業省貿易経済協力局貿易管理部安全保障貿易管理課が所管しています。

法源

日本では、国際輸出管理レジームや各種条約・国際会議等における国際的な取り決めに基づいて、外国為替及び外国[[貿易法]]（外為法）を根幹とした法体系を構築しています。

外為法第48条: 貨物に関する輸出管理制度の根拠規定。
輸出貿易管理令（輸出令）: 貨物に関する安全保障貿易管理制度の詳細を規定。
外為法第25条: 技術に関する輸出管理制度の根拠規定。
外国為替令（外為令）: 技術に関するリスト規制・キャッチオール規制を定める。

規制の対象と種類

貨物の輸出: 外為法上は明確な定義はないが、日本から船積みし外国へ実際に貨物が輸出される場合に規制対象となります。輸出をしようとする者だけでなく、その関与者も規制対象となります。

技術の提供: 技術に関しては、研修生や留学生への技術指導、技術資料の持ち出し、商品のサンプル海外送付に伴う技術資料提供なども規制対象となります。

リスト規制: 兵器そのものや軍事転用可能なデュアルユース品について、国際輸出管理レジームで合意された一定以上の性能・仕様を有する貨物・技術をリストアップし、輸出や関連技術の提供に経済産業大臣の許可を義務付ける規制です。

キャッチオール規制: リスト規制の対象外の貨物・技術に対しても、エンドユーザー（需要者）・エンドユース（用途）という観点から規制を加えるもので、補完的な輸出規制です。大量破壊兵器関連や通常兵器関連を対象としています。

仕向地の分類

経済産業省は、キャッチオール規制の対象となる仕向地を分類しています。かつては、韓国のみが対象となる「り地域」がありましたが、現在は廃止されています。

安全保障貿易管理教育

民間では、一般財団法人安全保障[[貿易情報センター]]（CISTEC）が、安全保障貿易管理に関する教育、企業の輸出管理体制構築支援、資格認定などを行っています。

各国の安全保障貿易管理

米国の安全保障貿易管理

米国では、輸出管理規則（EAR）や国際武器取引規則などに基づき、輸出管理を行っています。また、外国資産管理局は、さまざまな事業体に対する制裁プログラムを管理しています。米国再輸出規制は、米国の製品、技術、ソフトウェアが第三国へ再輸出される場合にも規制を適用します。さらに、紛争鉱物規制は、紛争地域に由来する鉱物の使用状況について調査・報告を義務付けています。

EUの安全保障貿易管理

EUでは、理事会規則（EC）第428/2009号に基づき、デュアルユース品の輸出、譲渡、仲介、トランジットの管理を行っています。この規則は、加盟国に輸出管理を支援する法律の制定を求めています。

イギリスの安全保障貿易管理

イギリスでは、2008年輸出管理令を主な規制として、輸出管理を行っています。品目はイギリスの戦略的輸出管理リストに記載されており、国際通商省の一部である国際通商省輸出管理局によって管理されています。

非安全保障分野の輸出管理

安全保障分野以外では、国内需要物資の確保、国際協定等に基づく取引禁止貨物、知的財産権侵害物品などが輸出管理の対象となります。

まとめ

輸出管理は、国際的な平和と安全を維持するための重要な制度であり、各国がそれぞれの法律や規制に基づいて、輸出を管理しています。企業は、輸出管理に関する知識を深め、適切な手続きを行うことが求められます。

参考資料

田上博道、森本正崇『輸出管理論』信山社、2008年。

関連項目

軍備管理
* デュアルユース

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