オーストリアケーブルカー火災事故

オーストリアケーブルカー火災事故

オーストリアケーブルカー火災事故は、2000年11月11日にオーストリア・カプルンの「Gletscherbahn 2」で発生しました。この事故により155人の命が奪われ、わずか12人が生還するという悲劇的な結果をもたらしました。

ケーブルカーの概要

「Gletscherbahn 2」は、カプルンとキッツシュタインホルンを結ぶケーブルカーで、1974年に開通し、1994年には車両が更新されました。全長は約3,900メートルで、最初の600メートルは屋外を通り、その後の3,300メートルはトンネル部分です。片道の乗車時間は約8分半で、このケーブルカーはそれぞれの編成がすれ違う中間地点以外を共用する、単線交走式の形式を取っています。スキー客などを効率的に輸送するため、編成は3両連結で最大180人を運ぶことができました。

事故概要

火災は、上りの車両がトンネルに入ってすぐ、最後尾の運転室から開始されました。出発から20メートルほどの地点で、数人の乗客が火災に気付きましたが、乗務員との連絡手段がない状況でした。乗客が携帯電話で連絡を試みるも、トンネルに入ることで圏外に。火災は急速に拡大し、ブレーキパイプが破損し、120リットルのオイルが流れ出すことで火は激化しました。

乗客たちは、煙や炎の中でパニックに陥り、アクリル製の窓を破ろうと試みましたが、ほとんどの乗客が助かるための方法を見つけられませんでした。乗務員が非常用バッテリーを用いてドアを開けた際、ドイツ人の男性消防士が窓から脱出した乗客に下に向かうよう指示しました。この消防士の助言に従った12名は無事に下の階段を下りて避難しましたが、他の150名は毒ガスに巻かれて命を奪われました。

■ 死亡者は最終的に約155人に上り、その中にはオーストリア人、ドイツ人、日本人など様々な国からの人々が含まれていました。日本人の死亡者には猪苗代中学校のスキー部員や慶應義塾大学の学生もおり、今回の事故は多国籍な悲劇として語り継がれることになりました。

事故の影響とその後の対応

この事故を受け、カプルンのケーブルカーの運行は再開されることはなく、トンネルは閉鎖されました。スキー場へのアクセスには、新たに設けられたロープウェイが利用されるようになりました。更には、当地には亡くなった方々を悼むための追悼施設が建設されました。

裁判の経緯

事故後、多くの関係者（会社役員や技術者など）が裁判にかけられましたが、2004年には証拠不十分により無罪判決が下されました。

各国の対策

日本では、事故後に全国の鉄道事業者に対して火災対策の安全点検が実施され、多くの事業者で不適切な設備が発見されました。フランスでもケーブル鉄道の安全確認が行われました。

文化的影響

オーストリアの著名な作家、エルフリーデ・イェリネクはこの事故を題材に戯曲『アルペンにて』を執筆しました。

この事故がもたらした教訓は、安全対策の見直しや、非常時の連絡体制の重要性など、今なお多くの人々に影響を与え続けています。

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