オーストリア・ロシア・トルコ戦争 (1735年-1739年)

オーストリア・ロシア・トルコ戦争（1735年-1739年）

1735年から1739年まで続いたオーストリア・ロシア・トルコ戦争は、18世紀の東ヨーロッパ及びバルカン半島における重要な衝突の一つである。この戦争は、ロシア帝国、ハプスブルク帝国であるオーストリア、そしてオスマン帝国の三者によるもので、その背景には地政学的な争いが存在した。

開戦の背景

戦争の引き金となったのは1735年末、クリミア・ハン国によるウクライナのヘーチマン国家への襲撃と、同国の王カプラン1世ギレイによるカフカース地方への攻撃であった。この動きに反応して、ロシアはアゾフ海やクリミア半島の支配を狙い、軍を展開した。また、1735年にはロシアとアフシャール朝ペルシアのナーディル・シャーとの間でギャンジャ条約が結ばれ、ロシアが過去の戦争で獲得した領土を返還することとなった。これにより、戦争の環境は整っていった。

戦闘の経過

戦争は1736年5月20日に始まり、ブルクハルト・クリストフ・フォン・ミュンニヒ率いるロシア軍がクリミア領に攻撃を仕掛けた。ミュンニヒ率いる軍は、6月17日にバフチサライを占領し、クリミア軍を次々に撃退した。しかし、1737年から1739年の期間には疫病が流行し、交戦国すべてがその影響を受けることとなる。1736年のクリミア戦役では、ロシア軍は犠牲者を出し、ウクライナへの撤退を余儀なくされる。

オーストリアはロシアの勝利を見て、1737年に連携を深めるが、バニャ・ルカの戦い（1737年8月4日）やグロッカの戦い（1739年7月）での敗北により、戦局は厳しくなった。ベオグラード包囲戦でも困難を極め、結局オーストリア軍は大きな損失を被った。

講和への道

1739年、ロシア軍は反撃し、オスマン軍に対するいくつかの勝利を収めるが、オーストリアの孤立が深まり、最終的にはベオグラード条約でオスマン帝国と単独講和を結ぶことになる。ロシアもまたニシュ条約で平和を手に入れるが、アゾフの領有には制限がつくなど、完全な勝利とは言えなかった。オーストリアにとっては戦争の成果がほとんど無い結果となり、失った領土は回復できずに終わった。

戦争の影響とその後

この戦争は、ロシアとクリミア・タタール間の力関係を明らかにした。クリミア軍はロシア領を襲撃することができず、逆にロシア軍による攻撃にさらされる結果となった。また、オスマン帝国は西方および北方での戦争に忙殺されることとなり、30年間の平和を享受するが、その間に軍事技術が停滞し、後の戦争への準備が不十分となってしまった。

この戦争を通じて得られた教訓は、軍事的な戦術や国家間の関係がどれほど重要であるかを示すものであった。ミュンニヒの近代的な軍事改革は、オスマン帝国に対しての優位性を証明したが、疫病や物資不足による困難もまた軍の運用に影響を与えた。

最終的に、この戦争はロシアのクリミア半島への進出への布石ともなり、後の露土戦争につながるものとなった。

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