オーディナリー (紋章学)

紋章学におけるオーディナリー：基本と種類

紋章学において、オーディナリー（英: Ordinary、仏: Pièce）は、紋章を構成する基本的な要素であり、単純な幾何学的な図形を指します。フィールドを分割する線とは区別され、特定の幾何学的図形であってもオーディナリーとはみなされないものも存在します。また、サブオーディナリーと呼ばれる、伝統的なオーディナリーとほぼ同等の期間使用されてきたにもかかわらず、一段低い地位を与えられている図形も存在します。

オーディナリーの種類

紋章学の黎明期から使用されてきた基本的なチャージは「高貴なるオーディナリー」と呼ばれ、以下の7種類が一般的です。

チーフ (chief)：シールドの上部3分の1を占める横長の帯
フェス (fess)：シールドの中央を左右に横切る帯
ペイル (pale)：シールドの頂部から底部へ垂直に伸びる帯
ベンド (bend)：シールドの右上から左下へ斜めに走る帯
シェブロン (chevron)：逆V字形の図形
クロス (cross)：垂直な帯と水平な帯が交わる十字
サルタイアー (saltire)：斜め十字

ただし、ポールの扱いや、バーが「高貴なるオーディナリー」に含まれるかどうかなど、文献によって解釈に差異が見られます。パイルについても、オーディナリーとするかサブオーディナリーとするかで意見が分かれています。

サブオーディナリーの種類

サブオーディナリーに含まれるチャージの種類も文献によって異なりますが、概ね以下の7種類が共通認識となっています。

ボーデュア (bordure)：シールドの周囲を縁取る帯
オール (orle)：シールドの外周から離れた位置にある縁取り
インエスカッシャン (inescutcheon)：シールドの内側に配置された小型のシールド
トレッシャー (tressure)：オールと同様の縁取りだが、細く二重になっていることが多い
クォーター (quarter)：シールドの左上4分の1を占める区画
カントン (canton)：クォーターと同様だが、より小さい区画
フローンチ (flaunch)：シールドの左右両端から張り出す円弧状の図形

ロズンジ、フュージル、ジャイロン、フレットなどもサブオーディナリーとして扱われることがあります。さらに、レイブル、ビレット、ラウンデルを含む場合もあります。

ディミニュティブ：オーディナリーの縮小形

ディミニュティブ (Diminutives) は、通常のオーディナリーよりも細い、または小さい同形状のチャージを指します。同一フィールドに複数のチャージを配置する際に使用されます。ベンドレット、バーリュレット、ペイレット、シェブロネルなどがその例です。

ヴォイド：チャージに穴を空ける表現

ヴォイデッド (voided) は、チャージに穴を空け、背後のフィールドが見えるようにする表現です。穴の形や色を指定することも可能です。

まとめ

オーディナリーは紋章を構成する基本的な要素であり、その種類や配置、表現方法によって多様な紋章が生まれます。紋章学を理解する上で、オーディナリーの知識は不可欠と言えるでしょう。

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