オートマグ

.44オートマグ：夢と挫折のマグナム自動拳銃

1969年、ハリー・サンフォードによって設計された.44オートマグは、世界で初めてマグナム弾を使用する自動拳銃として登場しました。当時、マグナム弾といえばリボルバーが一般的でしたが、オートマグは自動拳銃の利点である装弾数の多さと、反動の軽減、そして発射ガスの効率的な利用を活かすことで、最強の拳銃を目指した画期的な試みでした。ステンレス鋼を採用した堅牢な設計と、自動小銃と同様のターンボルト・ロッキングシステムは、当時の技術革新を象徴するものでした。先行予約は8000丁にも上り、その期待の高さが伺えます。

技術的特徴と問題点

オートマグは、大型のレシーバー一体型銃身、リブ付きのバレル、そして冷却用の大型ホールを備えていました。使用弾薬は.44AMP弾（.44 Auto Mag Pistol）で、その強力な反動を制御するため、ボルトアクセロレータも搭載されていました。しかし、この革新的な設計には様々な問題点が潜んでいました。

ステンレス鋼の加工技術の未熟さや、適切な潤滑油の不足は、動作不良の原因となりました。レシーバーやチャンバー内の汚れも、閉鎖不良を招き、頻繁なメンテナンスを必要としました。さらに、.44AMP弾の供給が遅れたことや、メーカーによって弾薬の品質にばらつきがあったことも、動作不良を助長しました。

発射時の大きな反動も問題でした。銃の握り方によっては閉鎖不良を起こし、コッキングピースを用いたボルト操作も、高いコッキングスプリングのレートにより強い力を必要とするなど、使い勝手も決して良いとは言えませんでした。装弾数は7発とされていますが、実際には7発装填すると弾倉を傷める危険性がありました。これらの欠点から「オートジャム（作動不良）」という不名誉なニックネームが付けられるほどでした。

商業的失敗とその後

これらの欠陥により、オートマグは商業的には失敗に終わります。製造メーカーも売却や合併を繰り返し、刻印は「AM」、「TDE」、「HIGH-STANDARD」、「AMT」など、幾度と変化しました。1983年には生産中止となりますが、1998年から2000年にかけて、設計者であるハリー・サンフォードの追悼を込めて、オリジナル刻印のレシーバーが限定販売されました。しかし、販売を担当したAMT-Galena社の倒産により、わずか70丁ほどの生産で終わっています。

2015年、Automag LTD. Corp.社がハリー・サンフォードの遺族から資材と商標権を取得し、現代の技術を用いてオートマグを再設計、改良することで復活を遂げました。マガジンリップやフォロアーの改良、CNC加工技術の採用などにより、以前の問題点を克服した高品質な銃となっています。口径も.44AMP弾のほかに.44マグナム弾、.45ウィンチェスターマグナム弾、.22LR弾などをラインナップしています。

バリエーションとAMTオートマグシリーズ

オートマグには、.44口径のスタンダードモデル（180）や、.357口径のモデル（160、.357オートマグ）などいくつかのバリエーションが存在しました。中でも、俳優クリント・イーストウッドに贈呈された特別モデル「CLINT-1」は有名です。

ハリー・サンフォードは、AMT社（Arcadia Machine and Tool Inc.）において、オートマグの後継機種となるAMTオートマグシリーズも設計しました。しかし、こちらはコルト・ガバメントをベースとした全く異なる設計で、オリジナルのオートマグとは異なるものです。AMTオートマグシリーズには、.22WMR弾を使用するオートマグII、.30カービン弾を使用するオートマグIIIなどがあり、エアソフトガンメーカーの東京マルイがオートマグIIIのエアソフトガンを発売したことで、日本では広く知られるようになりました。

結論

.44オートマグは、革新的な設計と強力な火力で注目を集めながらも、技術的課題や商業的な不運により短命に終わった、ドラマチックな歴史を持つ拳銃です。しかし、その挑戦的な精神と、現代における復活劇は、銃器史における重要な一頁を刻んでいます。オートマグの成功と失敗は、技術開発と市場ニーズのバランス、そして製品の信頼性の重要性を改めて示していると言えるでしょう。

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