オーバーな奴

トムとジェリー：オーバーな奴

1954年11月13日に公開された『オーバーな奴 (Downhearted Duckling)』は、ウィリアム・ハンナとジョセフ・バーベラ監督による、人気アニメーションシリーズ『トムとジェリー』の傑作の一つです。本作は、容姿にコンプレックスを持つアヒルの子の物語をコミカルに描いた作品として知られています。

物語は、ジェリーが泣きじゃくるアヒルの子を発見する場面から始まります。このアヒルの子は、童話『みにくいアヒルの子』の影響を受けて、自分の容姿を深く悲観し、自己嫌悪に陥っていました。ジェリーはアヒルの子を励まそうとしますが、アヒルの子は既に極度の落ち込みようで、なんと斧を使って自作のギロチンを作り、自殺を図ろうとします。

ジェリーは間一髪でアヒルの子の命を救いますが、アヒルの子の厭世的な気分は消えず、今度はトムに自分を食べてほしいと懇願します。トムはアヒルの子の頼みを受け入れようとしますが、ジェリーはそれを阻止します。こうして、アヒルの子とトム、ジェリーの予測不能な騒動劇が幕を開けます。

ジェリーはアヒルの子のコンプレックスを解消しようと、泥パックを施したり、ヘアカラーでアヒルの子の容姿を変化させようと試みます。その最中、トムが再び登場します。しかし、泥パックで変貌したアヒルの子の姿に恐怖を感じたトムは、一目散に逃げ出してしまいます。

トムにまで逃げられたことで、アヒルの子の絶望はさらに深まります。彼は顔を紙袋で覆い隠してしまい、ジェリーにも心を開かなくなります。そんな中、通りかかった美しい雌アヒルがアヒルの子に声をかけ、彼の容姿を褒め称えます。その言葉は、アヒルの子の心を一変させ、それまでの悲観的な思考は吹き飛び、アヒルの子は希望に満ち溢れた表情になります。

そして、思いもよらない展開でアヒルの子は新たな恋を見つけ、幸せそうに去っていく姿を見届けたジェリーは、呆然としながらも安堵の表情を浮かべて物語は幕を閉じます。

本作は、主要キャラクターであるトムとジェリーに加え、アヒルの子と雌アヒルという新たなキャラクターが登場します。トムはアヒルの子を食べる寸前でジェリーに邪魔され、泥パック姿のアヒルの子を見て逃げ出すという、コミカルな役回りを演じます。ジェリーはアヒルの子の自殺を止め、彼のコンプレックスを解消しようと尽力する、心優しいキャラクターとして描かれています。アヒルの子は、容姿コンプレックスに悩みながらも、最後は幸せを掴むという、共感できるキャラクターです。雌アヒルは、アヒルの子の心を救う重要な役割を担っています。

『オーバーな奴』は、予測不能な展開と、キャラクターたちのユーモラスな動き、そして最後は希望に満ちた感動的なラストシーンが見どころです。また、本作では背景や音楽も重要な役割を果たしており、作品全体の雰囲気を高めています。スタッフには、ウィリアム・ハンナ、ジョセフ・バーベラといった巨匠たちの名前が並びます。日本のテレビでは、TBS系列で1964年から1990年頃まで放送されていました。

この作品は、トムとジェリーのコミカルな要素に加え、アヒルの子の心の葛藤と成長が描かれており、単なるコメディー作品としては留まらない奥深さを持っています。子供から大人まで楽しめる、何度見ても飽きない名作と言えるでしょう。

もう一度検索