オーブリー・ジョン・ケンプナー

オーブリー・ジョン・ケンプナー

オーブリー・ジョン・ケンプナー（Aubrey John Kempner, 1880年9月22日 - 1973年11月18日）は、英国に生まれ、主にアメリカ合衆国で活動した著名な数学者です。彼の研究は多岐にわたりましたが、特に数論および多項式理論の分野で重要な貢献を残しました。中でも、彼の名が冠されたケンプナー関数やケンプナー級数は、数学の特定の領域における基本的な概念として広く認識されています。

ケンプナーは、現在のグレーター・ロンドンの地域で生を受けました。彼は学業を深めるためドイツに渡り、1911年に歴史あるゲッティンゲン大学で博士号（Ph.D.）を取得しました。この時の指導教授は、解析的数論の創始者の一人であるエドムント・ランダウでした。ケンプナーの博士論文は「ヴァーリングの問題とそのいくつかの一般化」と題されており、これは数論における古典的な問題の一つであるヴァーリング問題に関するものでした。

博士号取得後、ケンプナーは活躍の場をアメリカ合衆国に移しました。最初にイリノイ大学で教職に就き、教育者としてのキャリアをスタートさせました。その後、1925年にはコロラド大学ボルダー校へ移籍し、同大学の数学科において長年にわたり教育と研究に従事しました。コロラド大学では、1944年から1949年までの期間、数学科長という要職を務め、学科の発展に貢献しました。また、彼の教育・研究活動はコロラド大学ボルダー校に留まらず、1950年からはコロラド大学医学校や、ボルダーに所在するアメリカ国立標準技術研究所（NIST）でも教鞭を執るなど、幅広い分野で活動を展開しました。

彼の数学研究の核心は、主に二つの領域にありました。一つは数論、特に整数に関する性質の研究です。もう一つは、多項式方程式によって定義される幾何学的な領域の「質量中心」を計算する理論に関する研究でした。これらの分野における彼の精密な解析と独創的な手法は、後続の研究者たちに大きな影響を与えました。特に、自然数の並びから特定の性質を持つものだけを選び出して和をとることで収束するという「ケンプナー級数」や、与えられた数の素因数分解に関連する「ケンプナー関数」は、今日でも数論の講義などで紹介される彼の代表的な業績です。

ケンプナーは学術団体においてもリーダーシップを発揮しました。彼はアメリカ数学協会（Mathematical Association of America, MAA）の活動に深く関与し、1937年から1938年にかけては同協会の会長を務め、アメリカの数学教育および研究の振興に尽力しました。彼の数学界への多大な貢献と教育者としての功績を記念し、コロラド大学ボルダー校の数学科では、彼を称える名前を冠した「ケンプナーコロキウム」という講演会シリーズが現在も継続して開催されています。

オーブリー・ジョン・ケンプナーは、その長い生涯を数学の研究と教育に捧げ、数論と解析学のいくつかの分野に不朽の足跡を残しました。

主な出版物

Kempner, Aubrey J. (1916). “On transcendental numbers”. Trans. Amer. Math. Soc. 17 (4): 476–482. doi:10.1090/s0002-9947-1916-1501054-4.
Kempner, A. J. (1935). “On the complex roots of algebraic equations”. Bull. Amer. Math. Soc. 41 (12): 809–843. doi:10.1090/s0002-9904-1935-06201-9.
Kempner, A. J. (1959). Paradoxes and common sense* (pamphlet; 22 pages). Van Nostrand.

もう一度検索