オープンサイエンス

オープンサイエンスとは

オープンサイエンスは、研究者だけでなく一般の人々も学術研究の成果にアクセスし、研究活動に参加できるようにするための様々な取り組みを指します。これは、科学的知見をよりオープンにし、社会に広く伝えることを目指す運動です。具体的には、オープンアクセスやオープンデータの推進、研究プロセスを公開するオープンリサーチコンピュテーションなどが含まれます。

オープンサイエンスの始まり

オープンサイエンスの歴史は、17世紀の学術雑誌の登場に遡ります。当時、科学的知識へのアクセスを求める社会のニーズが高まり、研究者たちは互いに成果を共有する必要性を認識しました。しかし、現在に至るまで、科学情報の共有範囲については議論が続いています。

オープンサイエンスの背景

科学は、データの収集、分析、公開、再分析、批判、再利用というサイクルで成り立っています。しかし、実際には、このサイクルを妨げる様々な障壁が存在します。例えば、有料の学術雑誌にアクセスするためには購読料が必要であり、データの利用が制限されていることがあります。また、データ形式が不適切であったり、専用ソフトウェアが必要な場合もあり、データの再利用が困難になることもあります。さらに、研究成果を公開することで情報のコントロールを失うことを懸念する文化も、オープンサイエンスの妨げとなっています。

FOSTERの分類によれば、オープンサイエンスはオープンアクセスやオープンデータを包含します。また、現代科学ではソフトウェアが不可欠であるため、オープンソース運動も重要な要素です。特に、コンピュータ解析の複雑化により、研究結果の再現性が問題視されるようになり、データと計算コードを公開するオープンリサーチコンピュテーションの必要性が高まっています。

学術雑誌以前の科学

学術雑誌が登場する以前、科学者は自身の発見を公表することに消極的でした。発見を公表するよりも、アナグラムや暗号で記述して流布し、後から自身の発見を主張する方が利益につながると考えられていたからです。このシステムでは、重要な発見が迅速に広まらず、誰が発見者であるかを証明することが困難でした。例えば、ニュートンとライプニッツは、それぞれが微積分を発明したと主張し、論争になりました。このような問題は、科学が閉鎖的であったために生じたと言えるでしょう。

また、当時、科学者は貴族の庇護を受けており、パトロンの期待に応える必要がありました。科学者はパトロンに名声をもたらす存在として、自身の成果を他の人々と共有することには消極的でした。

学会と学術雑誌の登場

やがて、科学への社会的な要求が高まり、パトロン制度は衰退しました。科学者は、複数のパトロンから資金提供を受けるアカデミーに所属するようになり、研究活動を安定させるようになりました。1660年にはイングランド王立協会、1666年にはフランス科学アカデミーが設立され、各国で学会が設立されるようになりました。

1665年には、世界初の科学専門誌である『フィロソフィカル・トランザクションズ』が創刊され、学術出版の基礎が築かれました。学術出版は、それ以来拡大を続け、科学知識の共有に不可欠な要素となりました。

学会の協力と政策

現代では、多くの学会が公的資金を受けた研究者に対し、研究成果の共有を求めています。ただし、技術開発の成果は独占を認める場合もあります。研究機関は、自機関の利益を優先し、情報を秘匿する傾向がありますが、科学全体の発展のためには研究成果の共有が不可欠であると考えられています。

各国政府は、科学研究に資金を提供しており、研究者はその成果を学術論文として発表します。しかし、多くの場合、学術誌は商業出版社が運営しており、論文を読むためには購読料が必要となります。これは、「納税者が研究のために税金を払っているのに、その成果を読むためにもお金を払わなければならない」という矛盾を生じさせています。

オープンサイエンスに関する各国の状況

アメリカでは、公的資金による研究成果を無料公開することに制限を加えようとする法案が提出されたことがあります。これは、民間セクターの利益を保護するためのものでしたが、研究者からは反対の声が上がりました。

日本では、第五期科学技術基本計画において、オープンサイエンスの重要性が言及されています。

オープンサイエンスの組織とプロジェクト

オープンサイエンスを推進する様々な組織やプロジェクトが存在します。大規模な科学プロジェクトは、小規模なものよりもオープンサイエンスに積極的な傾向があります。例えば、アレン脳地図、Encyclopedia of Life、Galaxy Zooなどのプロジェクトは、研究成果を公開し、一般の人々の科学への参加を促しています。

また、Public Library of Science (PLOS)やサイエンス・コモンズのような組織も、オープンサイエンスを推進する上で重要な役割を果たしています。

オープンサイエンスの留意点

研究成果の公開には、著作権やデータ利用に関する規定を遵守する必要があります。特に、出版物と非出版物では利用条件が異なるため注意が必要です。図書館の所蔵資料を利用する際には、各機関の規定を確認し、必要な手続きを行うことが求められます。

まとめ

オープンサイエンスは、科学の透明性を高め、知識を広く共有するための重要な運動です。研究者だけでなく、一般の人々も科学の発展に貢献できるよう、更なる推進が期待されています。

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