オールアイルランド・リーグ

オールアイルランド・リーグ（AIL）

オールアイルランド・リーグ（All-Ireland League、略称：AIL）は、アイルランド共和国およびイギリス北アイルランドを舞台とする、ラグビーユニオンの主要な国内競技会です。現在の冠スポンサー名を冠して、「エネルギア・オールアイルランド・リーグ（Energia All-Ireland League）」とも呼ばれています。このリーグは主にアマチュア選手によって構成されており、アイルランド全土から集まる50のクラブチームが参加しています。

リーグ構造と参加チーム

AILは、参加チームのレベルに応じて5つのディビジョンに分けられています。最上位から順に、ディビジョン1A、1B、2A、2B、2Cと呼ばれ、各ディビジョンには10チームが所属しています。レギュラーシーズンは例年9月下旬に開幕し、翌年4月下旬にかけて開催されます。

このリーグの大きな特徴の一つは、プロ選手の出場に厳しい制限が設けられている点です。最上位であるディビジョン1Aおよび1Bでは、プロ選手の登録は最大2名までとされており、そのうちフォワードの選手は1名までという規定があります。一方、ディビジョン2A、2B、2Cにおいては、プロ選手の出場は一切認められていません。また、外国籍のプロ選手がリーグでプレーすることはできません。

アイルランドラグビー協会には、レンスター、マンスター、アルスター、コナートといった地域を代表する4つのプロクラブが存在しますが、これらのチームはAILには参加しません。彼らはスコットランド、ウェールズ、イタリア、南アフリカ共和国などのプロクラブと共に、ユナイテッド・ラグビー・チャンピオンシップといった国際的なプロリーグで活動しています。

昇格・降格システム

AILでは、毎シーズンの終わりにチームの入れ替えが行われます。各ディビジョンの最下位、すなわち10位のチームは、自動的に一つ下のディビジョンへ降格となります。反対に、一つ下のディビジョンまたは下位大会であるプロヴィンシャルリーグの優勝チームは、自動的に上位ディビジョンへ昇格します。

また、各ディビジョンの9位チームは、下位ディビジョンまたは下位大会の2位、3位、4位チームとプレーオフ形式の入替戦トーナメントを行います。このトーナメントはノックアウト方式で行われ、9位チームが勝ち抜けば残留、下位ディビジョンのチームが勝利すればそのチームが昇格し、9位チームは降格となります。

最上位のディビジョン1Aでは、レギュラーシーズンの上位4チームがプレーオフに進出し、リーグの最終的な順位と優勝チームを決定します。ただし、3位決定戦は行われません。

歴史

AILが創設される以前、1990年よりも前のアイルランドには全国規模のラグビーリーグは存在しませんでした。当時は、国内の4つの州連盟がそれぞれ独自のカップ戦やリーグ戦を運営していました。

全国的なリーグの必要性が高まり、1990-91シーズンにオールアイルランド・リーグは産声を上げました。当初はディビジョン1（9クラブ）とディビジョン2（10クラブ）の2部制でスタートしました。その後、参加チームやレベルの拡大が進み、1993-94シーズンには4つのディビジョンに規模を拡大しました。

1995年のラグビーユニオンのプロ化は、AILにも影響を与えました。アイルランドラグビー協会は州代表チームの強化に重点を置き、優秀な選手たちは次第に国内リーグではなく、セルティックリーグ（現在のユナイテッド・ラグビー・チャンピオンシップ）へと集まるようになりました。

リーグ構造も時代と共に変化しました。2009-10シーズンにはディビジョン1が1Aと1Bに分割され、それぞれ8チーム編成となりました。さらに2011-12シーズンには、1Aと1Bがそれぞれ10チームとなり、それまでディビジョン2と3だったリーグが、2Aと2B（それぞれ16チーム）として再編されました。そして、現在の各ディビジョン10チームから成る5部制（1A, 1B, 2A, 2B, 2C）が確立されたのは、2015-16シーズンからです。

近年の出来事としては、2020年3月12日以降、新型コロナウイルスのパンデミックの影響を受け、2019-20シーズンは途中で終了し、2020-21シーズンは開催が見送られました。

歴代冠スポンサー

AILは、その歴史の中で様々な企業の支援を受けてきました。創設当初の1990-91シーズンはスポンサーがありませんでしたが、翌シーズンからはInsurance Corporation of Irelandが冠スポンサーとなり「Insurance Corporation League」と呼ばれました。その後、Allied Irish Banks（アライド・アイリッシュ銀行）、Ulster Bank（アルスター銀行）とスポンサーが変遷し、大会名もそれぞれ「Allied Irish Banks League」、「Ulster Bank League」となりました。2018-19シーズンは再びスポンサー不在の期間がありましたが、2019-20シーズンからはEnergiaが冠スポンサーとなり、現在の「エネルギア・オールアイルランド・リーグ」という名称になっています。

注目クラブ

AILの歴史において特筆すべきクラブとして、コーク・コンスティチューションが挙げられます。彼らは1990-91シーズンの初代優勝チームであり、リーグ創設以来一度もトップディビジョン（当初のDivision 1、現在のDivision 1A）から降格したことのない、唯一のクラブです。その安定した強さは、AILにおける伝説的な存在となっています。

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