オールウェザー (競馬)

オールウェザー馬場：競馬場の未来を変える革新的な走路

芝とダートの限界とオールウェザーの登場

競馬の馬場といえば、従来は芝とダートが主流でした。しかし、芝は馬の蹄によるダメージを受けやすく、維持管理に多大なコストと手間がかかります。特に寒冷地では冬季の開催が困難になることもありました。一方、ダートはメンテナンスは容易ですが、乾燥による砂埃や雨によるぬかるみといった問題がありました。これらの問題点を克服するため、天候に左右されず、馬にも優しく、安全で環境にも配慮した理想的な馬場へのニーズが高まり、オールウェザー馬場が開発されました。オールウェザー馬場、全天候型馬場、合成馬場、人工馬場など、様々な呼び名で呼ばれるこの馬場は、人工素材を用いることで、これらの課題の解決を目指しています。

オールウェザー馬場の導入と効果

オールウェザー馬場は、競馬場だけでなく、調教施設や乗馬施設などにも導入されています。2009年には、世界サラブレッドランキングにおいて、馬場の区分の1つとして正式に認められました。

各国の導入状況

イギリスでは、20世紀末からポリトラックを使用した馬場が導入され、現在も複数の競馬場が採用しています。アメリカでは、2000年代初頭からオールウェザーへの転換が進み、カリフォルニア州では主要競馬場への導入が義務付けられました。しかし、ブリーダーズカップでの結果や、素材による水はけの問題などから、必ずしも成功事例ばかりではないことも明らかになっています。ドバイでは、メイダン競馬場で導入されましたが、アメリカ調教馬の不参加といった問題が発生し、後にダートコースに戻されました。日本では、トレーニングセンターを中心に導入が進み、JRA美浦・栗東トレーニングセンターにも導入されています。地方競馬では、大井競馬場での導入計画もありました。

オールウェザー馬場の素材

オールウェザー馬場に使用される素材は多岐に渡り、それぞれの特性やメリット・デメリットが存在します。

エクイトラック: 砂とワックスの混合素材ですが、油汚れや蹄への付着といった問題がありました。
ファイバーサンド: 人工繊維と砂の混合素材ですが、分離しやすいという欠点がありました。改良型のファイバーマットは、東京競馬場の路盤に使用されています。
スタロック: アメリカのメーカーが製造する素材で、フランスやトルコなどで使用されています。
ポリトラック: 廃材を利用した環境に配慮した素材として注目され、多くの競馬場で使用されています。改良型のニューポリトラック(ポリトラックエリート)やポリトラッククラシックなども開発されています。
クッショントラック: 二酸化ケイ素、ゴムのくず、化学繊維などを混合した素材です。水はけの問題で、導入が中止されたケースもあります。
プロライド: ワックスを含まない素材として開発されましたが、水はけの問題が課題となりました。
* タペタ: カーペットを意味する言葉で、脚部不安の克服に貢献した素材として知られています。

オールウェザー馬場の課題と将来展望

オールウェザー馬場は、天候への依存度を減らし、馬の負担を軽減するなど多くのメリットがありますが、素材の種類や馬場管理によって、その効果は大きく異なります。また、導入初期には、ダート馬場との成績比較における疑問や、脚部への影響に関する懸念などが指摘されました。科学的な根拠に基づいた評価と、継続的な改良が求められています。

将来的には、さらに改良された素材や、馬場管理技術の進化によって、より安全で公平な競走環境が実現することが期待されます。オールウェザー馬場は、競馬の未来を左右する重要な要素であり、その発展には、技術革新と科学的な検証が不可欠です。

もう一度検索