オールド・トム・ジン

オールド・トム・ジンの魅力と歴史

オールド・トム・ジン（Old Tom Gin）、あるいはトム・ジン（Tom Gin）やオールド・トム（Old Tom）と呼ばれるこの飲み物は、18世紀のイングランドで非常に人気のあるジンでした。しかし、現代においてはその存在が薄れ、希少なアイテムとして扱われています。それにもかかわらず、最近のクラフトカクテルブームに伴い、再評価が進んでいます。

このジンは、ロンドン・ドライ・ジンよりも少し甘く、オランダのイェネーフェルよりは若干辛い独特の風味を持っており、しばしば「ミッシング・リンク」と称されることもあります。これは、ジンの進化の過程で重要な役割を果たしてきたからかもしれません。

歴史的な背景

オールド・トム・ジンの起源は18世紀の「狂気のジン時代」に遡ります。この時期、イギリス政府はジンの流通を抑えるために非常に高い課税や厳しい製造免許制度を導入しました。しかし、その結果、ジンの密造や非公式な販売が広まりました。

オールド・トム・ジンという名称は、通説によると、18世紀のロンドンでジンの密売を行っていたキャプテン・ダドリー・ブラッドストリートの店舗に掲げられていた「Old Tom Cat」という名の黒猫の看板に由来しています。この看板には金銭を入れる隙間と鉛管が設けられ、パブのバーテンダーが注いだジンが流れてくる仕組みになっていました。

この店舗は後のスピークイージーの先駆けとも言われ、次第に追随する密売所が増えていきました。1760年に蒸留が解禁されると、ジンは再び一般的な人気を得るようになり、オールド・トムはその代名詞として広まっていきました。

当時のジンは品質が粗悪であったため、隠すために砂糖が加えられていました。19世紀には連続式蒸留法の進化により、品質が向上しましたが、それでも多くの人々は甘さを好んだため、加糖が続けられました。

アメリカへの影響

1850年にイギリスからアメリカへのジンの輸出が解禁されると、サルーンなどでオールド・トム・ジンが提供されるようになりました。その結果、多くのカクテルレシピが生まれましたが、ドライマティーニの流行によって、オールド・トムは時代遅れの飲み物とされるようになりました。

かつてはさまざまな蒸留酒メーカーがオールド・トム・ジンを製造していましたが、最近ではヘイマンズ蒸溜所が18世紀のレシピに基づいた製品を復元し、再販売しています。また、数社がその後を追い、競争が生まれています。特にジャマイカのJ・レイ・アンド・ネフューが製造するオールド・トム・ジンは、その国で高い人気を誇り、ラム酒の一種として扱われることもあります。

現代の再評価

オールド・トム・ジンについての最古の記録は、1891年に出版された『The Flowing Bowl: When and What to Drink』の中にあります。この本には、トム・コリンズの作り方について言及されています。また、1887年版の『ジェリー・トーマスのカクテルブック』では、オールド・トム・ジンがマルティネスやパイナップル・ジュレップといったカクテルに選ばれています。

現在、オールド・トム・ジンは新たな人気を集めており、クラフトカクテルのバリエーションに取り入れられることが多くなっています。伝統的なバランスと新しいリバイバルの流れが合わさり、オールド・トム・ジンの未来に期待が寄せられています。

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