オールナイトロング (映画)

映画『オールナイトロング』について

『オールナイトロング』（1992年）は、松村克弥監督の劇場デビュー作であり、日本の映画史に残る問題作として知られています。この映画は、1982年に発生した「歌舞伎町少女アキレス腱切断殺人事件」をモチーフに、集団リンチ、レイプ、SM殺人といった過激な描写を盛り込み、観客に強烈な衝撃を与えました。

制作の背景

松村監督は、本作で初めてメガホンを取りました。その過激な内容から、映倫（映画倫理委員会）の審査員全員が成人指定を協議し、撮影の自粛を求めようとするほどでした。しかし、松村監督との激しいやり取りの結果、R指定（15歳未満鑑賞禁止）という形で公開されることとなりました。ビデオパッケージには「あの"映倫"を震撼させ、R指定を受けたニューバイオレンスムービー!!」というキャッチコピーが記され、その過激さを強調しています。

あらすじ

物語は、飛行機整備士を目指す斎藤慎治（17歳）、予備校生の田中徹也（18歳）、裕福な家庭の息子である鈴木健介（19歳）の3人の少年たちが、通り魔事件の現場に居合わせたことから始まります。健介が企画したパーティーで女性に相手にされないことに苛立ちを募らせていた健介と徹也。慎治は恋人ができるものの、不良グループに襲われ、恋人は集団レイプの末にアキレス腱を切断されるという悲劇に見舞われます。

怒りに燃える3人は、健介が持ち出した猟銃を手に不良たちへの復讐を計画します。アジトに乗り込んだ3人は、不良たちを徹底的に叩きのめしますが、徹也が誤って一人を射殺してしまいます。この出来事をきっかけに3人の狂気が爆発し、復讐は殺し合いへとエスカレートしていきます。

主要キャスト

鈴木健介：角田英介
裕福な家庭に育ち、見栄っ張りで女性にモテない。事件の発端となるパーティーを企画する。
斎藤慎治：鈴木亮介
飛行機整備士を目指す工業高校生。明るく軽薄な性格。恋人ができたことで幸せを感じるも、悲劇に見舞われる。
田中徹也：家富洋二
成績優秀な予備校生。気弱な性格で、女性に奥手。事件をきっかけに狂気に染まっていく。

良子：若山幸子
健介と知り合う女性。男っぽい話し方が特徴。
葉子：加山由実
慎治と親しくなる少女。屈託のない笑顔を見せるが、友達がいない。
江理：後藤宙美
徹也が好意を寄せる予備校生。玉利の紹介で徹也と知り合う。
玉利：田口浩正
徹也の予備校の友人。女性にモテる方法を知っている。
通り魔：サード長嶋
冒頭で少女を襲う男。
踏み切りの少女：永椎あゆ美
通り魔に襲われる少女
不良リーダー：毛利賢一
不良グループのリーダー。少年たちを恐喝する。
廃屋の少女：上野美津恵
不良たちのアジトにいる少女。
航空会社人事担当官：田口トモロヲ
慎治の面接を担当する。
工業高校教師：ラッシャー木村
慎治の担任教師。

スタッフ

監督・脚本：松村克弥
製作総指揮：池田哲也
プロデューサー：桝井省志、小林紘
音楽：秋山勝彦（P-MODEL）、岩永龍則
撮影：村川聡
照明：伊藤寛
美術：小林正己
録音：中村裕司
編集：矢船陽介

シリーズ作品

本作は、その過激な内容が話題を呼び、シリーズ化されました。主な続編として、以下の作品が挙げられます。

『オールナイトロング2』（1995年）
『オールナイトロング3 最終章』（1996年）
『オールナイトロング R（リターンズ）』（2001年）
『オールナイトロング イニシャルO』（2003年）
『オールナイトロング 誰でもよかった』（2009年）

特に、『オールナイトロング2』と『オールナイトロング3 最終章』は、映倫が審査を拒否するほどの過激な描写が含まれており、自主規制版とノーカット版の2種類がリリースされています。

その他

松村克弥監督は、本作で第14回ヨコハマ[[映画祭]]新人監督賞を受賞しました。しかし、現在、1作目から3作目まではVHSのみで、DVDやBlu-rayは販売されていません。

関連リンク

allcinema
KINENOTE
IMDb

『オールナイトロング』は、その過激な描写から賛否両論を呼びましたが、松村克弥監督の才能を世に知らしめた作品として、日本の映画史にその名を刻んでいます。

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