オール・ザ・キングスメン

『オール・ザ・キングスメン』



1949年に公開された映画『オール・ザ・キングスメン』は、ロバート・ペン・ウォーレンの小説を原作としており、ロバート・ロッセンが製作・監督・脚本を手掛けた作品です。この映画は、地方政治における権力の渦巻きと、それに翻弄される人間たちの悲劇を描いた硬派のドラマとして高く評価されています。

あらすじ



物語は、新聞記者ジャック・バーデンが、ウィリー・スタークという地方政治家の選挙運動を取材するところから始まります。ウィリーは南部のカノマシティで郡財務官に立候補しており、彼の選挙運動は誠実さや地元政治家の汚職を強く訴えるものでした。最初は、彼の誠実な人柄に感銘を受けたバーデンは、彼に関する肯定的な記事を書く決意をしますが、地元の権力者たちによって彼の選挙活動は次第に困難になっていきます。

落選後、ウィリーは法律を学ぶ決断をし、悲劇的な火災事故で亡くなった生徒たちの葬儀をきっかけに、今度は郡に対する訴訟を起こします。この訴訟の成功を通じて彼は政治力を身につけ、次第に名を知られる存在へと成長していくのです。しかし、彼が選挙の「スポイラー候補」としての立場から本当の候補者として立ち上がったとき、彼の演説は変化し、普通の人々からの大規模な支持を集めることになります。

ウィリーとバーデンは連携しながら選挙運動を展開しますが、複雑な人間関係や権謀が絡む中、ウィリーの腐敗と権力欲は徐々に彼を蝕んでいきます。ウィリーは当選を果たすが、その権力を悪用し、周囲を次第に無視するようになり、彼の道徳観は揺らぎ始めます。

彼の家庭も崩壊の危機に直面し、養子のトミーは父の影響で精神的に傷つき、最終的には飲酒や事故に巻き込まれることになります。ウィリーは、権力を維持するために、トミーを試合に出場させるなどの無理な判断を下すことで、家庭の悲劇を助長します。また、ウィリーは法廷での多くの問題に直面し、特に彼がかつての支持者だったスタントン判事との関係が悪化していく中で、政治ゲームの中での彼の絶望的な立場が露呈します。

やがて、ウィリーの過去が明るみに出ることで、彼は弾劾裁判の危機に直面することになります。これが彼の権力の終焉を迎える瞬間となります。最終的には、敵の策略によって彼は命を落とし、彼の死後、かつての助手ジャックはウィリーの評判を落とす方法を見つけようとします。ジャックの視点を通じて、ウィリーの憐れな運命が描かれ、彼の絶頂と転落の物語は深い余韻を残します。

主な受賞歴



『オール・ザ・キングスメン』は、1950年に行われた第22回アカデミー賞で、作品賞、主演男優賞(ブロデリック・クロフォード)、助演女優賞(マーセデス・マッケンブリッジ)の3部門を受賞しました。また、2006年には同名の映画が制作され、ショーン・ペンが主演を務めました。

日本での受容



アカデミー賞受賞作でありながら、日本では1949年当時に公開されませんでした。これは、アメリカの政治腐敗を描いた内容がGHQの指示により公開が見送られたためです。日本で初めて公開されたのは1976年で、当時の社会状況とも重なり、大きな話題となりました。

このように『オール・ザ・キングスメン』は、権力、道徳、そして人間関係の複雑さを描いた物語として今も高く評価されています。

もう一度検索

【記事の利用について】

タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。

【リンクついて】

リンクフリーです。