普通の人々

普通の人々（Ordinary People）

『普通の人々』は1980年に制作されたアメリカ映画で、家族の断絶や精神的な葛藤をテーマにした重厚なドラマです。この作品は、第53回アカデミー賞で作品賞、監督賞を獲得した他、助演男優賞と脚色賞も受賞し、映画界における重要な位置を占めています。

概要

この映画は、シカゴ郊外に住む弁護士の一家、ジャレット家の物語です。物語は、長男の水死事故を起点に展開され、父親のカルビン、冷淡な母親ベス、感受性豊かな次男コンラッドの心情を丁寧に描写しています。事故後、家族はそれぞれの思いを抱え、心の距離が広がり、家庭は崩壊への道を歩んでしまいます。特に、かつては幸福な家庭として描かれていたWASP（ホワイト・アングロ・サクソン・プロテスタント）家庭が、機能不全に陥る様子が非常にリアルに表現されています。

この映画は、人間関係や感情の深さを追求しており、ねじれた家族関係や失われた絆がテーマとなっています。こうしたテーマは、実際に他の作品でも扱われており、『アイス・ストーム』（1997）や『アメリカン・ビューティー』（1999）なども同様の問題設定を持っています。

ストーリー

ストーリーは、ジャレット家の日常からスタートします。主人公の家族は、長男バックが亡くなったことで心のバランスを崩し、次男コンラッドは精神的な問題に悩まされます。事故から数ヶ月後、コンラッドは精神病院から退院し、再び学校生活を送るものの、家族との関係は改善されません。

冷淡な母親ベスはコンラッドに対して心を開かず、父のカルビンは息子を心配するも、その思いが伝わらないジレンマに悩まされます。そんな中、カルビンはコンラッドを精神分析医のバーガーのもとへ通わせる決断を下し、徐々にコンラッドは自身の思いを話せるようになります。

さらに、コンラッドは過去に同じ病院に通っていたカレンと再会するものの、彼女との関係でも新たな葛藤が生じます。母親の期待に反する形で水泳部を辞めたことを、彼は両親に言えずにいました。その結果、彼の心はさらに孤独になり、葛藤は深まっていく一方です。

コンラッドは、カレンや新しい友人との関わりを通じて少しずつ自分を見つめ直しますが、家族間の対話の不足が彼の心情に重くのしかかります。クリスマスの際に家族で訪れたヒューストンでは、冷え切った関係が更に浮き彫りとなり、コンラッドは心の平穏を得るためにもっと自分を曝け出す必要があると感じています。

監督と演者

本作は、俳優としても名高いロバート・レッドフォードによる初の監督作です。アカデミー賞ではその才能を認められ、監督賞を受賞しました。彼自身も若い頃は画家を目指しており、その視点から季節感や中西部の美しい風景を映し出す感性が光ります。

まとめ

『普通の人々』は、家庭内のさまざまな問題を繊細に描写した作品であり、家族の形や人間関係の在り方について深く考えさせられる傑作です。この映画は、世代を超えて多くの人々に感動を与え、今でも語り継がれる名作となっています。

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