オール・ネイションズ

オール・ネイションズ：多国籍混成のプロ野球団

オール・ネイションズは、1912年から1925年までアメリカ合衆国中西部を巡業したプロ野球団です。その名の通り、チームには黒人、白人、インディアン、ハワイ人、日本人、ラテンアメリカ人など、様々な国籍や民族の選手が在籍していました。

球団の歴史

オール・ネイションズは、スポーツ用品店ホプキンス・ブラザースによって創設されました。初期には監督の不正により危機に見舞われましたが、選手のJ・L・ウィルキンソンが監督兼オーナーとなり、チームを立て直しました。本拠地はミズーリ州カンザスシティやアイオワ州デモインに置かれていました。

ウィルキンソン監督は、チームを真剣な姿勢で試合に臨ませ、他の巡業チームのような滑稽な茶番劇は行いませんでした。しかし、観客を楽しませるための工夫も凝らされており、試合前にはダンスバンドの演奏、試合後にはレスリングの披露などが行われました。

ウィルキンソンは、25,000ドルを投じて寝台車を購入し、チームの移動手段として使用しました。この寝台車には、試合で使用する可搬式の仮設観覧席も積み込まれていました。また、選手たちの宿泊費を節約するため、試合前夜には球場にテントを持ち込み、そこで寝泊まりさせていました。

『Sporting Life』紙は、ウィルキンソン監督率いるオール・ネイションズを「大リーグのどのクラブとも互角に戦えるほど強い」と評しました。1916年には、強豪チームのインディアナポリスABCズを破り、シカゴ・アメリカン・ジャイアンツとも対戦しました。

第一次世界大戦中は、多くの選手が徴兵され、チーム運営が困難となり、1918年に一時解散しました。1920年にニグロ・ナショナル・リーグが設立されると、ウィルキンソンはカンザスシティ・モナークスを結成し、オール・ネイションズの選手が多数参加しました。

1923年から1924年には、投手ジョン・ドナルドソンが監督を務め、再びオール・ネイションズとして活動しました。この時期のチームは、経験不足な選手の育成や新たな才能の発掘を目的として、本拠地を持たないトラベリング・チームとして中西部を巡業しました。

日本人選手「ジャップ・ミカド」

オール・ネイションズには、「ジャップ・ミカド」という登録名の日本人選手が在籍していました。佐山和夫は、著書『「ジャップ・ミカド」の謎』の中で、この選手が三神吾朗であり、日本人初のプロ野球選手であると主張しました。

しかし、その後の研究で、「ジャップ・ミカド」という名前は、三神以前からチームに所属していた東洋人が代々名乗っていたものであり、その人物が三神とは別の日本人である可能性も指摘されています。

オール・ネイションズは、多様な文化が混ざり合ったユニークなチームであり、その活動は、当時のアメリカ社会における人種や文化の多様性を反映していました。

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