オーヴェルニュ家

オーヴェルニュ家は、10世紀以降にオーヴェルニュ伯領を統治した中世フランスの貴族家門です。その歴史は、9世紀末にオーヴェルニュ副伯となった一族が、アキテーヌ公領の混乱に乗じて勢力を拡大し、オーヴェルニュ伯に昇格するところから始まります。彼らはアキテーヌ公の支配下から実質的に独立し、独自の地位を築きました。

しかし、ロベール3世伯の死後、オーヴェルニュ伯家は内紛に見舞われます。ロベール3世の息子ギヨーム7世が伯領を相続しますが、叔父のヴレ伯ギヨーム8世が、ギヨーム7世が第2回十字軍に参加している隙を突いて、オーヴェルニュ伯領全域を横領してしまいました。ギヨーム7世は、一部の領地を与えられ、オーヴェルニュのドーファンを名乗ることになります。この称号は、ギヨーム7世の母の実家であるアルボン家が、ヴィエノワのドーファンの称号を使っていたことに由来します。

この結果、オーヴェルニュ伯領はギヨーム8世の系統が、オーヴェルニュ・ドーファン領はギヨーム7世の系統が治めることとなり、分裂した状態が続きました。伯家とドーファン家は、どちらもアキテーヌ公爵家の流れをくむプランタジネット家の与党であったため、1195年以降はフランス王フィリップ2世と対立することになります。フィリップ2世王は、オーヴェルニュの一部を占領し、1213年にはリオンを中心とする地域を「オーヴェルニュ領」としてフランス王領に併合しました。フランス王権の干渉はその後も続き、ギー2世伯の時代には、伯が領内の高位聖職者との係争に追われている間に、国王側がオーヴェルニュ伯領全域を占領し、王領に編入してしまいました。

1241年、旧オーヴェルニュ伯領に比べて小規模なオーヴェルニュ伯領が新たに創設され、ギー2世の息子であるギヨーム10世に授けられました。しかし、オーヴェルニュ伯家は、1424年に女伯ジャンヌ2世が亡くなったことで断絶します。その後、ジャンヌ2世の配偶者だったベリー公ジャンの子孫が相続権を主張しましたが、伯領はジャンヌ2世の同族の従妹であるマリー1世とその婚家であるラ・トゥール家に渡ります。ラ・トゥール家は、オーヴェルニュ伯家の正統な相続人であることを示すため、ラ・トゥール・ドーヴェルニュ家の複合姓を称しました。

一方、オーヴェルニュ・ドーファン家は、1436年にドーフィヌ・ジャンヌ1世の死によって断絶し、その配偶者だったブルボン家のモンパンシエ伯ルイ1世が所領を相続しました。これにより、オーヴェルニュ家は、伯領とドーファン領の両方が別々の家系によって相続されることになり、その歴史に幕を閉じました。

オーヴェルニュ家の歴史は、中世フランスにおける貴族の興亡と、王権の拡大という大きな流れの中で、家門が分裂し、最終的には消滅していく過程を示す、複雑で興味深い事例と言えるでしょう。

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