オー・ヘンリー

O・ヘンリー：人生と作品

ウィリアム・シドニー・ポーター、通称O・ヘンリー（1862年9月11日 - 1910年6月5日）は、アメリカを代表する短編小説家の一人です。約280編もの短編小説を執筆し、その多くは庶民の喜怒哀楽を描いたものでした。イギリスの作家サキと並び称されるほどの短編の名手として、英米両国で高い評価を得ています。数多くの作品が映画化されていることからも、その人気と影響力の大きさが伺えます。

波瀾万丈の人生

ノースカロライナ州グリーンズボロで医師の息子として生まれたO・ヘンリーは、3歳の時に母親を亡くし、叔母に育てられました。本好きだった彼は15歳で学業を離れ、テキサス州に移住。薬剤師、ジャーナリスト、銀行の出納係など様々な職を転々とする生活を送りました。


1887年、アトール・エステスと結婚。1894年には風刺週刊紙『The Rolling Stone』を創刊しますが、経営はうまくいかず廃刊。その後、『ヒューストン・ポスト』でコラムニスト兼記者として活動しました。


しかし1896年、以前勤めていたオハイオ銀行から金を横領したとして起訴されます。週刊紙の運営費に充当したものと見られていましたが、真相は不明なままです。裁判を前に、病弱な妻と娘を残しニューオリンズに逃亡。妻の危篤を聞きつけて帰郷しますが、妻は亡くなってしまいます。1898年、O・ヘンリーは8年の懲役刑を宣告されました。

獄中から開花した才能

服役前から短編小説を書き始めていたO・ヘンリーは、獄中でも執筆を続けました。刑務所では薬剤師として働き、比較的恵まれた環境で過ごすことができたとされています。そして、3作品が服役中に出版されるという成果を上げます。模範囚として減刑され、1901年に釈放。その後はピッツバーグ、そしてニューヨークに移り住み、作家活動に専念しました。


ニューヨークでは多くの作品を発表、出版し、『ニューヨーク・ワールド』紙と毎週1編の連載契約を結ぶなど、作家として成功を収めました。1904年には処女作『キャベツと王様』、1906年には『四百万』を発表。1907年には幼なじみと再婚し、新しい生活を始めます。


しかし、晩年は過度の飲酒により健康を害し、1910年、肝硬変と糖尿病を併発して亡くなりました。

ペンネームの由来

O・ヘンリーというペンネームの由来には諸説あります。新聞の社交欄にあった名前、愛猫の名前、オハイオ州立刑務所、逃亡中に会った強盗など、様々な説が取り沙汰されています。しかし、獄中から検閲を逃れて作品を投稿していたという事実から、ペンネームは偽名として使われていたと考えられます。

代表作

O・ヘンリーの代表作には以下のような作品があります。これら作品群は、ユーモラスでありながら、人間の心の機微を繊細に描き、読者に深い感動を与え続けることで知られています。


『最後の一葉』
『賢者の贈り物』
『都会の敗北』
『警官と讃美歌』
『赤い酋長の身代金』
『よみがえった改心』
『緑の扉』
『自動車を待つ間』
『振子』
『アラカルトの春』
その他多数


これらの作品は、しばしばねじれたユーモアと、意外な結末で知られています。

オー・ヘンリー賞

O・ヘンリーの名を冠したオー・ヘンリー賞は、英語で書かれた優れた短編小説に与えられる賞として知られています。

日本での紹介

日本では1920年、『新青年』誌に『運命の道』が掲載されたのが最初です。現在では、多くの翻訳作品が出版されており、現代の読者にも親しまれています。

参考文献

齋藤昇『「最後の一葉」はこうして生まれた～O・ヘンリーの知られざる生涯』
* その他多数


O・ヘンリーの作品は、その巧みな語り口と、人間の温かさや哀しみを繊細に描き出したことで、今もなお世界中で愛され続けています。彼の人生と作品は、私たちに多くの感動と教訓を与えてくれます。

もう一度検索