カイソウ

カイソウの軌跡

カイソウ（1941年 - 没年不詳）は、第二次世界大戦中に日本の競馬界で名を馳せた競走馬です。1944年に行われた日本ダービーでの勝利は、その華々しい競技人生のハイライトですが、彼の運命はその後の出来事により大きく揺れ動くこととなります。

生い立ち

カイソウは1941年、北海道の錦多峯牧場で誕生しました。父親はアメリカの名馬マンノウォーの子孫である持込馬の月友、母親の第二ベバウは帝室御賞典を制した実力を持った馬でした。カイソウは、出産から2歳になるまでの短い期間ですでにその素質を開花させ、札幌のセリに出され、建築業を営む有松鉄三に9000円で落札されました。

彼は当初、小倉で管理される予定でしたが、最終的には久保田金造厩舎に預けられることとなりました。これは、有松と久保田の関係から生じたもので、今に伝わる名馬のストーリーのひとつです。

競走生活の始まり

カイソウの本格的な競走生活は1944年4月23日、京都競馬場の芝1600メートルでのレースから始まりました。このレースでは、惜しくもハナ差で2着となりましたが、その後のレースでは順調に勝ち進み、6月には東京に上京します。今後のレースでカイソウは橋本輝雄騎手の指揮の下、待望の日本ダービーに向けて練習を重ねることになります。

7月18日、日本ダービーの日、競馬場は独特のムードに包まれていました。観客はなく、軍関係者など約200名のみが見守る中、カイソウは重馬場の中、見事な走りで優勝を飾りました。優勝の際には、他の競走馬を大きく引き離し、安心して見守る関係者たちを魅了したのです。この年、日本各地での競馬開催が次々と中止になる中、カイソウの勝利は競馬界にとっても意味のある出来事でした。

クラシック二冠の夢

続く12月8日には、長距離特殊競走に出走。このレースでもカイソウは一位で入線しましたが、全騎手が従来のコースを誤り、競走は不成立となるという信じがたい不幸な出来事が起こります。このため、カイソウはクラシック二冠を逃す結果となったのです。その不成立の理由は、コースの変更が選手に周知されておらず、全騎手が指示に従わなかったためとされています。

その後、カイソウは一度レースを走ったものの思うような成績は残せず、引退を余儀なくされます。競走馬としての名声を享受した彼でしたが、終戦後の彼の未来は不透明なものでした。

引退後の消息

カイソウの引退後の情報は非常に限られており、彼が軍馬となり名古屋師団に所属したとされる噂が残されています。1959年に発行された『日本ダービー25年史』には、彼が師団長の乗馬となったとの風聞が記されています。また、丘雅男による小説「カイソウは何処にいる」でも、引退後の詳しい状況が掘り下げられており、彼の最後のレースからわずか2日後にセリ市場で落札されたことが記述されています。

名古屋大空襲が発生した際には、厩舎が焼失し、カイソウを含む数頭の馬が市街へと逃げ出したともされています。しかし、その後の彼の運命は明らかにされていません。

まとめ

カイソウは、日本競馬史の中でも忘れ得ぬ名馬として、その名を刻んでいます。彼の波乱に満ちた人生は、ただの一馬の物語ではなく、戦争という歴史的背景の中での一つの象徴であり、その後の消息が絶たれたことにより、さらに多くの人々の関心を呼ぶ存在となっています。

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