カイヤン

カイヤン (Pangasianodon hypophthalmus)

カイヤンはナマズ目パンガシウス科に属する魚で、優れた泳ぎと独特な外見が特徴の一種です。主に熱帯環境で飼育され、多くの地域では食用としても人気があります。この魚はサメのような特徴を持っているため、視覚的に興味を引く存在です。

特徴

カイヤンは水域の中層をゆったりと泳ぎ、その姿は非常に美しいです。目が大きく、左右に張り出しているため、視野が広がります。また、背中は黒く光沢があり、腹部は白に黒い三本の縞模様が入っています。幼魚の際は、黒色ではなく銀色の縞模様を持ち、見る角度によって青や群青の色合いを美しく発光します。

この魚は主にチャオプラヤ川やメコン川などの河川に原産し、これらの場所で生息環境が整っています。特に、pHが6.5から7.5、水温が22度から26度の環境が最適です。このため、ミャンマーのエーヤワディー川やインドネシア、マレーシアにも養殖目的で導入され、定着が進んでいます。

カイヤンは繁殖行動が特徴的で、河が氾濫し水量が増加する時期に、上流に移動して産卵します。その後、水が引くとともに下流へ戻るという渡りを行います。下流への移動は水量の減少に伴い、洪水が収束する時期に行われるため、水系によって移動時期は異なります。例えば、メコン川では、5月から7月にかけて上流に、9月から12月にかけて下流に戻ります。

養殖および食用

カイヤンは特にタイやラオス、カンボジア、ベトナムにおいて食用として重宝され、欧米への輸出も行われています。特にベトナムでは「チャー」として知られ、アメリカでは「スワイ」または「チャー」として流通しています。バサという魚と混同されることがありますが、味はバサに劣るものの、成長が早く、価格も比較的抑えられています。アメリカでは装飾だらけのナマズが議題となり、米越ナマズ戦争の一因ともなっています。

飼育

カイヤンはタイで広く養殖されており、日本の熱帯魚店でも容易に購入できます。通常5センチ程度の幼魚が300から600円で販売され、その後、最大90センチほどまで成長します。色素が無いアルビノ個体も流通しており、人気があります。飼育方法は他の熱帯魚に類似しており、雑食性で餌の幅が広いです。金魚の餌から赤虫まで、さまざまな餌を好みますが、環境には注意が必要です。

カイヤンは他の魚には攻撃的ではありませんが、驚きやすい性質があるため、水槽にぶつかることがあります。ナマズ属全般に言えることですが、病気に対しては強く、成長も早い傾向があります。ただし、水温が下がると、体色が淡くなることがあります。

保全状況

現在、野生のカイヤンの個体群はタイとカンボジアで著しく減少しており、特にチャオプラヤ川やタイ側のメコン川では絶滅が危惧されています。混乱を招く要因には、乱獲や環境劣化、ダムの建設などによる生息地の喪失が挙げられ、大変脆弱な状態に置かれています。カイヤンの保全のためには、持続的な養殖と自然環境の保護が求められています。

もう一度検索