カイロ (イリノイ州)

イリノイ州カイロ：水上交通の要衝から衰退した歴史都市

アメリカ合衆国イリノイ州の最南端に位置するカイロは、アレクサンダー郡の郡庁所在地であり、ミシシッピ川とオハイオ川の合流点という地理的に重要な場所にあります。かつては水上交通の要衝として栄えましたが、現在は衰退し、多くの問題を抱える都市となっています。

歴史

1818年に創設されたカイロは、一旦は廃れましたが、1837年に再建され、1858年に正式な市となりました。19世紀には2つの大河の合流点という立地から、水上交通の拠点として急速に発展しました。市には独自の税関が設けられ、豪邸が立ち並ぶほどの繁栄を誇りました。南北戦争時には、ミズーリ州とケンタッキー州という奴隷州に挟まれた自由州の砦、ディファイアンス砦が重要な役割を果たしました。

しかし、20世紀に入り、交通手段が蒸気船から鉄道や自動車に移り変わると、カイロの地理的な位置は逆に不利となりました。1920年の人口15,203人をピークに、人口は減少し続け、2000年にはわずか3,632人となりました。1969年には公民権運動による暴動が発生し、軍隊が出動する事態にまで発展しました。これにより、カイロはイリノイ州内でも黒人人口が多い都市の一つとなりました。

現在も人種間の緊張は高く、貧困、10代の妊娠、教育問題、失業、医療サービスの不足といった様々な問題に直面しています。2004年には最後の大工場が閉鎖され、市の将来に大きな影を落としています。

歴史的建造物

カイロには、かつての繁栄を偲ぶことができる歴史的な建造物が点在しています。

マグノリア・マナー（Magnolia Manor）: 1869年建立のレンガ造りの豪邸で、国家歴史登録財にも指定されています。
リバーロア・マンション（The Riverlore）: 1865年建立の史跡で、現在はカイロ市が管理しています。
ジェム・シアター（Gem Theatre）: 1910年建立のアール・デコ調の劇場で、現在修復中です。
旧カイロ税関（The Cairo Custom House）: ロマネスク様式で建てられた建物で、現在は博物館として利用されています。
サフォード記念図書館（A.B. Safford Memorial Library）: 1884年開館の図書館で、南北戦争に関する史料を多く所蔵しています。
ディファイアンス砦州立公園（Fort Defiance State Park）: ミシシッピ川とオハイオ川の合流点に位置する砦の跡地で、南北戦争時に重要な役割を果たしました。
郵便局（U.S. Post Office）: 歴史的な建築物の一つです。
ヒューワー像（The Hewer）: 洪水の際に人々を救う男性をモデルにした裸身像です。

これらの歴史的遺産は、市の観光資源としての可能性を秘めていますが、アクセスの不便さなどから観光産業の発展には繋がっていません。

地理

カイロは北緯37度0分47秒、西経89度10分49秒に位置し、標高は96mです。総面積は23.6平方キロメートルで、そのうち陸地が18.2平方キロメートル、水域が5.4平方キロメートルです。市の総面積の約22.78%が水域となっています。

交通

カイロの北約8kmにはカイロ空港がありますが、規模が小さく便数も限られています。近隣の大規模な空港であるランバート・セントルイス国際空港やメンフィス国際空港までは200km以上離れています。

州間高速道路I-57が市の北を走り、シカゴまで約600km（約6時間）でアクセス可能です。また、市内では国道51号線、60号線、62号線が交わっています。しかし、グレイハウンドのバスターミナルやアムトラックの駅はありません。

人口推移

1880年から2009年までのカイロ市の人口推移は以下の通りです。




これらのデータからも、カイロの人口が20世紀を通じて減少を続けていることがわかります。


カイロは、その歴史的な背景と地理的な重要性にも関わらず、現在では多くの課題に直面しています。今後は、これらの課題を克服し、歴史的な遺産を活かした持続可能な都市への再生が期待されます。

もう一度検索