カイロの聖母

カイロの聖母出現：ゼイトゥーンの奇跡と謎

1968年から1971年にかけて、エジプトの首都カイロ近郊のゼイトゥーン地区で発生した聖母マリアの出現は、現代史における宗教的現象として注目に値します。この出来事は、単なる噂話ではなく、多数の目撃者、写真、さらには当時のエジプト大統領ガマール・アブドゥル＝ナーセルも目撃したとされるなど、多くの証拠が残されています。

最初の出現は1968年4月2日の夜。イスラム教徒であるファルーク・ムハンマド・アトワ氏が聖母教会近くのバス整備中に、教会の上空に輝く白い人影を目撃したことから始まりました。当初は女性が自殺を試みていると誤解したアトワ氏でしたが、やがてその人影が聖母マリアであると認識したのです。彼以外にも、複数の目撃者が同様の人影を目撃し、現場には瞬く間に群衆が集まりました。

警察も出動し、群衆の解散を試みました。警察は現象を単なる光の反射と説明しようとしましたが、目撃者の証言は一貫して聖母マリアの出現を主張しました。警察による群衆の解散は失敗に終わり、出現現象はその後も継続。一週間に2～3回という頻度で発生し、その神秘的な光景は数年にわたって続きました。

この現象は、当時エジプトを統治していたガマール・アブドゥル＝ナーセル大統領も目撃したと伝えられています。さらに、新聞社のカメラマンやエジプトのテレビ局もこの現象を撮影。警察による徹底的な調査が行われましたが、現象を科学的に説明することはできませんでした。15マイル圏内に、目撃された人影を映し出すような装置は見つからず、多くの写真が撮影されたにも関わらず、複雑な写真操作の痕跡も発見されませんでした。

政府による調査の結果、現象の科学的な説明は不可能と結論付けられ、エジプト政府は公式にこの出現を事実として認めました。さらに、コプト正教会のキリロス6世総主教も、この出現を公認する声明を発表しています。

しかし、この現象の真偽については、様々な議論が今もなお続いています。懐疑的な見解としては、集団心理やパレイドリア（偶然の視覚パターンを意味のあるものと認識する現象）といった可能性が指摘されています。一方で、信じる人々にとっては、聖母マリアからの奇跡的なメッセージであり、信仰を深める重要な出来事なのです。

ゼイトゥーンの聖母出現は、科学と宗教、合理性と信仰が複雑に絡み合った、現代社会における未解明な謎のひとつとして、人々の関心を惹きつけ続けています。この出来事を通して、信仰、奇跡、そして人間の認識の限界について、改めて考えるきっかけを与えてくれるのではないでしょうか。

関連項目

コプト正教会
パレイドリア

外部リンク

* Zeitun　The apparitions of Our Lady　-　福者カルロ・アクティス製作のサイト

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