コプト正教会

コプト正教会

コプト正教会（コプトせいきょうかい）は、主にエジプトを中心に展開するキリスト教の教派で、非カルケドン派正教会の一つです。コプト教会とも呼ばれ、エジプトに住むキリスト教徒を「コプト」と称します。この教会の起源は、福音記者マルコが1世紀頃にアレクサンドリアに教会を設立したことに遡ります。

歴史

コプト正教会は、その教会の設立から長い歴史を持ちます。451年のカルケドン公会議以降、教会はカルケドン派と分かれることとなり、以降の数世紀にわたる冷戦状態が続きました。619年にはサーサーン朝ペルシア帝国に、639年にはイスラム帝国に支配されるなど、外部からの圧力が続きました。1321年にはマムルーク朝下での宗教的迫害に直面し、多くの教会が焼き討ちにあい、信徒数が減少しました。1882年、エジプトがイギリスの支配下に置かれ、少しずつ宗教的自由がもたらされました。近年では、エチオピア正教会やエリトリア正教会など、他の正教会が独立した背景も持っています。

教義と典礼

コプト正教会はニカイア・コンスタンティノポリス信条を受け入れ、聖母マリアを「神の母」として崇敬します。教義に関しては、単性論ではなく合性論を自称し、カルケドン派との意見の違いを強調しています。典礼言語にはコプト語やアラビア語が使用され、ディオクレティアヌス紀元とコプト暦を基にした教会暦が用いられます。洗礼は原則的に全浸礼のみ認められ、その他の伝統とも類似点が多いのが特徴です。

他教派との関係

コプト正教会は、アルメニア使徒教会やシリア正教会、エチオピア正教会など、他の非カルケドン派の教会とフル・コミュニオンの関係にあります。しかし、カルケドン派の教会との相互領聖は今のところ認められていません。しかし、2001年には相互に行われた洗礼が有効であることが確認され、一歩進んだ関係が築かれています。

組織と教皇

コプト正教会の最高権威はアレクサンドリアの「教皇」であり、実質的に教会全体を代表する存在です。現在の教皇はタワドロス2世であり、2012年に就任しました。彼はエジプトカイロに位置する聖マルコ・コプト正教会大聖堂に居住し、教会を導いています。

信者数と活動

現在、コプト系キリスト教徒はエジプトやスーダン、エチオピアなどに約5千万人いるとされていますが、エジプト国内では約5%のキリスト教徒がコプト正教会の信者です。日本においては、2004年に「聖ジョージ日本コプト正教会」が設立され、数回にわたって教会活動が行われています。また、日本国内のコプト信者にはエジプト人やエチオピア人が多く、日本人の洗礼者も増えてきています。

イスラム教との関係

エジプトでは信教の自由が保障されているものの、コプト正教徒は少数派としての差別が依然として存在しています。一部ではコプトからムスリムへの改宗が長年の間に難しくなっており、国内のコプト信徒の人々の間には不満の声も上がっています。

注目すべき事例

コプト教会には、2011年に発生したアレクサンドリアの教会前での爆発事件など、信者を巻き込む悲劇的な事件もありました。このような事件は、エジプト国内の宗教間の緊張が引き起こす影響を示しています。

コプト正教会の信仰は、長い歴史の中で形づくられた伝統や文化を持ちながら続いています。この教会はエジプトのキリスト教の重要な部分であり、その存在は他のキリスト教徒との連帯や共存の重要性に対する認識を深める材料となっています。

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