カイロ団長

カイロ団長

「カイロ団長」は、宮沢賢治が未発表のまま生涯を終えた短編小説です。この作品は、愉快でありながらも教訓的な物語が展開され、登場人物である三十匹のあまがえるたちと、彼らを取り巻く環境が描かれています。

あらすじ

物語は、三十匹のあまがえるたちが協力して様々な仕事をしているシーンから始まります。彼らの主な作業内容は、虫の仲間から依頼された木の実や花を集めたり、美しい庭を作ったりすることです。ある日、彼らは道を歩いていると、「舶来ウェスキイ」を売るとのさまがえるに出会い、その商品に魅了されるのです。

仲間たちはウェスキイを心から楽しみますが、予想以上にお金を使ってしまったため、代金が払えなくなります。仕方なく、とのさまがえるの家来となり、彼が結成した「カイロ団」の一員として働くことになります。最初は、ウェスキイの魅力に釣られながらも、次第に厳しい労働が要求されるようになります。

ある日、とのさまがえるは、あまがえるたちに対して非常に過酷な命令を出します。なんと、今日中に900貫もの石を運ぶようにというものでした。この無茶ぶりに対し、あまがえるたちは耐えられなくなり、警察に突き出してほしいと願うまでに至ります。

そんな折、あまがえるたちに「王さまの新しいご命令」が伝えられます。この命令の内容は、仕事を命じる者が先に同じ仕事を体重に応じて倍の量をこなすというものでした。この命令に則り、立場が逆転したあまがえるたちは、とのさまがえるにも巨石を引かせようと試みますが、失敗し、その無様さを嘲笑います。しかし、一方でその状況の中で孤独感を感じ、沈黙します。

さらに、その後に伝えられた新たな命令は「すべての生き物はかわいらしくて気のいい存在であり、決して憎んではならない」というものでした。この教えを通じ、あまがえるたちは再び心を開き、とのさまがえるが悔い改めて涙を流しながらカイロ団を辞め、仕立屋に戻ることになります。

最後に、あまがえるたちは再び自主的に自分たちの仕事に取り組むことができるようになります。この物語は、仲間意識や労働の意義、そして相手を理解し合うことの重要性を教えてくれます。宮沢賢治ならではの寓話的な要素がふんだんに織り交ぜられたこの作品は、時代を超えて多くの読者に感動を与え続けています。

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