カウシルズ

アメリカの音楽グループ、カウシルズは、カウシル一家のメンバーを中心に結成された「家族バンド」として特異な存在感を放っています。父親のビル・シニアがマネージメントを担い、母親のバーバラと七人の子供たちが演奏・歌唱するという形態で、ポピュラー音楽界において他に類を見ない活動を展開しました。

彼らが世界的な名声を得るきっかけとなったのは、1967年にリリースしたシングル「雨に消えた初恋」（The Rain, the Park & Other Things）です。この曲はスティーヴ・デュボフとアーティ・コーンフェルドによって作詞・作曲され、彼らのキャリアにおける最大のヒット曲となりました。この曲は多くのアーティストにカバーされており、日本でもザ・レンジャーズ、南沙織（英語詞）、水上卓（日本語詞：麻こよみ）、Wink（日本語詞：石川あゆ子）、見砂直照と東京キューバン・ボーイズ（インストゥルメンタル）などによって多様な形で再演されています。また、カウシルズは日本でも人気を博し、洋楽番組『ビートポップス』では、司会の大橋巨泉氏が「ウシも知ってるカウシルズ」というユニークなフレーズで紹介するのが恒例となり、ファンに親しまれました。

「雨に消えた初恋」以外にも、彼らは多くのヒット曲を生み出しました。

『空飛ぶ心』（We Can Fly）(1968年): 米ビルボード21位
『友達になろう』（In Need Of A Friend）(1968年): 米ビルボード54位
『インディアン・レイク』(1968年): 米ビルボード10位
『悲しきベイビー』（Poor Baby）(1968年): 米ビルボード44位
『ヘア』(1969年): 米ビルボード2位

主なメンバーとその役割は以下の通りです。

ビル・カウシル (William Joseph Cowsill Jr., 1948-2006): 長男、リード・ボーカル、ギターを担当。
リチャード・カウシル (Richard James Cowsill, 1949-2014): 次男、1990年代以降の再結成期にボーカルで参加。ボブと双子。
ボブ・カウシル (Robert Paul Cowsill, 1949-): 三男、リチャードと双子。ボーカル、ギターを担当。現在の中心メンバーの一人。
ポール・カウシル (Paul Mitchell Cowsill, 1951-): 四男、ボーカル、キーボードを担当。現在の中心メンバーの一人。
バリー・カウシル (Barry Steven Cowsill, 1954-2005): 五男、ベースを担当。
ジョン・カウシル (John Patrick Cowsill, 1956-): 六男、ドラムスを担当。現在の活動にも時折参加。
スーザン・カウシル (Susan Claire Cowsill, 1959-): 長女、ボーカルを担当。最年少でありながら、その歌声でグループの魅力に貢献。現在の中心メンバーの一人。
バーバラ・カウシル (Barbara Cowsill, 1928-1985): 一家の母親、ボーカルを担当。グループの温かみを象徴する存在だった。
ビル・カウシル・シニア (William Joseph Cowsill, Sr.): 一家の父親、主にマネージメントとしてグループを支えた。

カウシルズは1972年に一度解散しますが、その後小規模な形で断続的に再結集を試みます。そして1990年からは本格的に活動を再開しました。しかし、長い活動の中で、メンバーは幾多の困難に直面しました。母親のバーバラは1985年に世を去り、ベースを担当していたバリーは2005年、米国南部に甚大な被害をもたらしたハリケーン・カトリーナによる災害で行方不明となり、後に遺体で発見されるという悲劇に見舞われました。また、長男のビルも病により2006年に亡くなりました。

現在、グループはボブ、ポール、スーザンを中心に、時折ジョンも参加する形で活動を継続しています。そして、長い沈黙を破り、2022年9月には実に23年ぶりとなるニューアルバム『リズム・オブ・ザ・ワールド』を発表し、健在ぶりを示しました。家族の絆と音楽への情熱を原動力に、カウシルズはその独特なハーモニーを今も響かせています。

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