カウンディンヤ

カウンディンヤ：扶南国の初代君主をめぐる二つの説

カウンディンヤ（Khmer: កៅណ្ឌិន្យ、Odia: କୌଣ୍ଡିନ୍ୟ、Sanskrit: कौण्डिन्य）は、東南アジアの古代国家、扶南の初代君主として伝えられています。彼の出自や扶南建国に至る経緯については、複数の説が存在し、歴史学者の間でも議論が続いています。

女王ソーマとの結婚による建国説

一つ目の説は、カウンディンヤがインドからカンボジアに渡り、現地の女王ソーマと結婚したことで扶南国を建国したとするものです。この説話は、扶南の王統がインド文化の影響下にあったことを示唆しており、王権の正当性を主張する上で重要な役割を果たしたと考えられます。ソーマ女王との結婚は、異文化間の融合と新たな国家の誕生を象徴する出来事として、扶南の歴史において特筆されるものです。

バラモン僧による王位簒奪説

もう一つの説は、カウンディンヤがインド出身のバラモン僧であり、マレー半島を経由してカンボジアに渡り、王位を簒奪して扶南国を建国したとするものです。この説は、既存の権力構造に対する外部からの挑戦と、新たな支配体制の確立を示唆しています。バラモン僧という身分は、宗教的な権威と知識を持ち合わせていたことを意味し、王位簒奪を正当化する上で利用された可能性があります。

扶南国とカウンディンヤの謎

カウンディンヤに関する史料は限られており、彼の出自や建国方法については、依然として不明な点が多く残されています。しかし、彼の存在は、扶南国がインド文化の影響を強く受け、多様な文化が交流する中で成立した国家であったことを物語っています。今後の研究によって、カウンディンヤの実像がより鮮明になることが期待されます。

扶南国の成立は、東南アジアの歴史において重要な転換点であり、カウンディンヤはその創始者として、後世に語り継がれる存在です。彼の物語は、伝説と史実が入り混じったものであり、扶南という古代国家の魅力を一層引き立てています。

参考文献
* 深見純生「混填と蘇物--扶南国家形成の再検討」『国際文化論集』第39号、桃山学院大学総合研究所、2009年3月10日

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