カエンボク

カエンボク（火焔木）

カエンボク（学名：Spathodea campanulata）は、ノウゼンカズラ科に分類される常緑高木です。ジャカランダ、ホウオウボクと並び、世界三大花木の一つとして知られています。その名の通り、炎のような鮮やかな花を咲かせるのが特徴です。

形態

西アフリカ原産のカエンボクは、高さ12〜25mにまで成長します。葉は羽状複葉で、若葉は象牙色をしていますが、成長すると光沢のある緑色に変化します。一年を通して、枝先に赤みがかったオレンジ色のつり鐘型の花を多数咲かせます。この華やかな見た目が、観賞用として人気を集める理由の一つです。カエンボク属は、本種を含めて3種が知られており、いずれも熱帯アフリカに自生しています。

生態

カエンボクは、湿潤で日当たりの良い、肥沃な土壌を好みます。そのため、農地や攪乱地によく見られますが、自然林にも生育します。寒さには弱く、霜が降りる地域では生育できません。また、塩分にも弱いため、海岸沿いの土壌には適していません。

花は、他のノウゼンカズラ科の植物と同様に、つり鐘型の合弁花です。学名の種小名「campanulata」も、この花の形に由来しています。花はやや上向きに咲くため、花の中に雨や露が溜まります。この水は、鳥やコウモリを引き寄せ、花粉の媒介に役立っています。受粉後には莢を形成し、縦に割れると中から種子が放出されます。カエンボクは、ハチドリ類の重要な吸蜜源となっており、ムナグロマンゴーハチドリ、クロハチドリ、コガネオサファイアハチドリなどが花蜜を求めて集まります。

生命力が強く、切り株からも芽を出し、容易に再生します。材は柔らかいため、中南米ではゴシキドリなどの巣穴を掘る鳥類が営巣に利用します。また、耐火性に優れており、燃えにくい性質を持ちます。材にはニンニクのような臭いがあるのが特徴です。

人間との関係

カエンボクは、世界中の熱帯地域に街路樹や庭園樹、観賞用の花木として導入されています。英語では、Fountain Tree, African tulip tree, Flame-of-the-forest, Nandi Flame など、様々な名前で呼ばれています。和名の「カエンボク」は、これらの英名の直訳に由来します。また、「アフリカンチューリップツリー」を直訳した「アフリカチューリップノキ」や「アフリカユリノキ」といった名前でも知られています。

「カエンボク」という和名は、オーストラリア産のヌイチア・フロリブンダやゴウシュウアオギリに対しても用いられることがあります。また、三大花木の一つであるホウオウボクを「カエンジュ（火焔樹）」と呼ぶことがあり、本種と混同されることがあります。中国語では、カエンボク（Spathodea campanulata）のことを「火焰樹」と呼びます。

原産地では、種子を食用に、木材を製紙に、樹皮、花、葉を薬用に使用します。つぼみの内部には水が溜まっており、子供たちはこのつぼみを水鉄砲のようにして遊ぶことがあります。この水には花粉が含まれているため、衣服や指を黄色く汚してしまうことがあります。

カエンボクは、パイオニア植物としての性質や多産性、強い生命力など、侵略的外来種に共通する特徴を持っています。実際、アメリカ、オーストラリアなど、太平洋の各地で野生化が確認されています。IUCN（国際自然保護連合）は、本種を「世界の侵略的[[外来種ワースト100]]」の一つに選定しており、ハワイなど固有種が豊富な太平洋の島嶼部における生態系への侵入を懸念しています。

日本では、植物園の温室の他、沖縄県や小笠原諸島で庭木などとして植栽されていますが、2008年現在まで野生化の報告はありません。耐霜性がないため、沖縄や小笠原以外の地域での野生化の可能性は低いと考えられていますが、沖縄や特に固有種が多い小笠原での野生化には注意が必要です。外来生物法の要注意外来生物リストにも掲載されています。

脚注

カエンボク - 沖縄県緑化種苗協同組合

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