カッタンクディの虐殺

カッタンクディの虐殺

カッタンクディの虐殺は、1990年8月3日にスリランカのカッタンクディで発生した衝撃的な事件であり、147人のイスラム教徒の男性や男児が襲撃されて命を落としました。この出来事は、スリランカ内戦の中でも特に悲劇的な一幕として記憶されています。

背景

スリランカでは1975年から、タミル・イーラム解放のトラ（LTTE）による独立運動が続いていました。彼らは、タミル人のための独立国家を求めて戦いを続けており、1989年には和平交渉が試みられましたが、失敗に終わり、再び大規模な衝突が起こりました。特に1990年6月から7月にかけて、LTTEは政府の施設を狙った襲撃を行っており、イスラム教徒の商店や村も攻撃を受ける事例が出ていました。

事件の詳細

8月3日の夜、約30人の武装したタミル人戦闘員たちは、バッティカロア・ラグーンを越えてカッタンクディに侵入しました。彼らは、信者たちが集まっていた4つのモスクに入り込みました。式典の最中、信者が礼拝をしている最も無防備な状態で、突然襲撃を開始しました。重火器を用いた攻撃が行われ、手榴弾も使用され、多くの人々がその場で命を落としました。

襲撃に遭ったモスクは、Meera Jumma Masjid、Hussainiya、Masjid-Jul-Noor、Fowzieの4カ所でした。戦闘員たちは、信者に見えないようにイスラム教徒の衣服に身を包んでおり、混乱の中で一斉に攻撃。そのため、多くの信者は逃げる暇も無く、ばらばらに撃たれていきました。

現場に駆けつけたスリランカ軍は、遅れて到着しましたが、地雷の懸念があったため、迅速な介入ができなかったと言われています。この遅れにより、地元住民は軍が事件に関与しているのではと疑念を抱くようになりました。最終的な犠牲者は147人を数え、彼らは地元のメーラ・ジュマ・モスクの墓地に埋葬されました。

目撃者の証言

事件後、国際メディアが生存者の証言を取り上げ、事実を広めました。『ニューヨーク・タイムズ』は、多くの目撃者の証言を掲載し、事件の恐怖を描写しました。ビジネスマンのモハメド・イブラヒームは、「まさか、このような凄惨な出来事が自分たちの町で起こるとは思ってもいなかった」と述べ、衝撃を受けた様子が伝えられました。

同様に、17歳の学生モハメド・アリフも、「ただ礼拝に参加していただけなのに、突然の襲撃に驚愕した」とその恐怖を語りました。

事件後の対応

スリランカ政府は、事件直後に傷者を病院に搬送するために空軍のヘリコプターを派遣し、救助活動が行われました。政府はまた、犯人を確保するための捜索を行い、LTTEの戦闘員を追跡しましたが、見つけることは容易ではありませんでした。

一方で、LTTEは事件への関与を否定し、政府側が自作自演をしているとの主張を続けました。事件は、紛争の激化と非武装の民間人の被害の象徴として、長い間語り継がれることとなります。悲劇的なこの出来事を通じて、スリランカの社会に残る傷跡は、今なお癒えぬ状態であると言えるでしょう。

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