タミル人

タミル人：南インドとスリランカの民族

タミル人は、主にインドのタミル・ナードゥ州やスリランカの北部と東部に住む民族であり、タミル語を母語とするドラヴィダ系の人々です。彼らは世界的には約7000万人以上を占め、南インドだけでなく、マレーシア、ミャンマー、シンガポール、アフリカの一部地域、モーリシャス、フィジー、イギリス、アメリカなどにも移民として存在しています。

言語と文化

タミル語はドラヴィダ語族に属し、これには古くからの文学が豊富に残されています。タミル語の最古の碑文は紀元前3世紀にさかのぼり、特に紀元前後から3世紀にかけて、マドゥライの宮廷で制作された「サンガム文学」が著名です。これらの文学作品にはアーリヤ文化の影響はあまり見られず、独自の特性を保っています。

また、タミル人の宗教は多様で、主にヒンドゥー教、ジャイナ教、イスラーム教、キリスト教などがあり、タミル語を用いた宗教文献も存在します。特にヒンドゥー教の影響が強く、シヴァとヴィシュヌへの信仰が広まっています。

歴史的背景

タミル人の歴史は多様で、古代の王国からイギリス植民地時代まで、多くの変遷がありました。4世紀以降、北インドからジャイナ教や仏教が浸透し、様々な文学作品が生まれました。特に、5～14世紀にはチョーラ朝などの王国が栄え、広い地域にタミル文化と宗教が広まり、現在も多くのタミル人が信仰する神々の概念が形成されました。

イギリスによる植民地支配の時代には、タミル人のアイデンティティが重要視され、言語学的な発展が進む中で、タミル民族主義が芽生えました。1949年にはドラヴィダ進歩同盟が成立し、タミル人の政治的な権利拡大が求められるようになりました。

地理的分布

タミル人は主にタミル・ナードゥ州に集中していますが、その他にもインド各地及び海外にも多くのコミュニティが存在します。特にカルナータカ州南部やマハーラーシュトラ州にも重要な集団があり、インド全体でタミル人は多様に分布しています。

一方、スリランカにはスリランカ・タミルとインド・タミルという2つのグループが存在します。スリランカ・タミルは紀元前からの南インドからの移住者の子孫であり、独自の文化を保っています。インド・タミルは19世紀のイギリス植民地下で南インドから連れてこられた人々の子孫です。

現代の状況

スリランカにおけるタミル人の状況は複雑で、1948年の独立以降は多くの政治的課題に直面してきました。シンハラ人との対立や、内戦の歴史が影響を与えています。現在も、タミル人の文化とアイデンティティの維持が求められており、民族的な対立の解消に向けた動きが続けられています。

このように、タミル人は歴史と文化、言語に豊かな特徴を持ち、世界中の地域でそのアイデンティティを発展させています。

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