カットノン原子力発電所

カットノン原子力発電所について

カットノン原子力発電所は、フランス北東部、モゼル県カットノン近郊に位置する原子力発電所です。モーゼル川の西岸に立地し、近隣にはドイツやルクセンブルクとの国境があります。この発電所は、1978年に建設が決定され、1991年に完成しました。建設地はかつてマジノ線の一部であった場所にあり、歴史的な背景も持っています。

発電所の概要

カットノン原子力発電所は、1300MW級の加圧水型原子炉を4基備えています。原子炉の総数では世界第7位、フランス国内では2番目の規模を誇り、フランスの電力供給に重要な役割を果たしています。年間発電量は約35億kWhに達し、フランス電力の総発電量の約8%を担っています。発電所内には約1200人の従業員が常駐し、定期検査時にはさらに約1000人が追加で従事します。

歴史と論争

建設当初から、周辺国、特にルクセンブルクからの反対がありました。2003年のヨーロッパ熱波の際には、冷却水排水の温度管理に関する免除が認められましたが、実際には使用されませんでした。また、地震に対する脆弱性も指摘されていますが、2010年の改正地震ハザードマップでは危険性は低いと評価されています。

1986年には、反原発団体の活動家が冷却塔に侵入する事件が発生しました。2017年には、グリーンピースの活動家が敷地内に侵入し、警備体制の不備を指摘する事件も起きました。

原子炉の延命と安全対策

2010年、フランス電力は40年を超える原子炉の延命計画を発表し、2016年から2022年の間に設備の近代化を進めました。この計画は、他の加圧水型原子炉のモデルケースとなるものでした。

福島第一原子力発電所事故後、周辺自治体から発電所停止の要求が出ましたが、フランス電力は原子力安全当局に対しストレステストの結果を報告し、安全対策を強化しました。具体的には、ディーゼル補助発電機の設置、冷却水供給の強化、非常用資器材の配備などが挙げられます。国際原子力機関（IAEA）も検査を行い、運用安全性は保証されていると評価しました。

設備の詳細と特徴

各原子炉は、モーゼル川から取水した冷却水を使用しています。発電所の東側には、冷却水用の貯水池であるミルゲンバック人造湖があります。また、貯水池の水量不足に備え、南東約100kmのピエール＝ペルセ湖からも冷却水が供給されています。

2011年には、モーゼル川からの取水ポンプのコンクリート土台に亀裂が見つかり、安全性が懸念されました。2012年には、燃料貯蔵プールや配管に欠陥が見つかり、国際原子力事象評価尺度でレベル2と評価されました。この欠陥は、30年間放置されていたもので、定期検査では発見されませんでした。

まとめ

カットノン原子力発電所は、フランスのエネルギー供給に欠かせない施設です。しかし、建設当初からの周辺国との対立や、度重なる事故や事件により、その安全性には常に注意が払われています。今後も、安全対策の強化と情報公開が求められるでしょう。

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