カップルズ

『カップルズ』

エドワード・ヤン監督が1996年に発表した台湾映画です。原題は『麻將』、英題は『Mahjong』。現代台湾を舞台にした群像劇であり、若者たちの複雑な内面と社会との関わりを描いています。

概要

『カップルズ』は、『牯嶺街少年殺人事件』に続くエドワード・ヤン監督の長編作品で、前作にも出演したクー・ユールン、チャン・チェン、ワン・チーザンといった若手俳優を再び起用し、物語の中心に据えています。主演の一人にはフランス人女優ヴィルジニー・ルドワイヤンを迎え、国際的な色合いも加わっています。

舞台は、1990年代半ば、バブル経済が終焉を迎えつつある台北。この過渡期にある都市を背景に、4人の少年たちの無軌道な日常と、そこに関わる人々との交流を通じて、当時の台湾社会が抱える矛盾や不安、そして若者たちのアイデンティティの揺らぎを描き出しています。本作は、第46回ベルリン国際映画祭でアルフレッド・バウアー名誉賞を受賞したほか、第33回台湾金馬奨でワン・チーザンが助演男優賞を獲得するなど、国内外で高い評価を受けました。2025年には4Kレストア版が劇場公開され、改めて注目されています。

ストーリー

物語の中心となるのは、台北で共同生活を送る4人の少年たちです。彼らはレッドフィッシュ、ホンコン、トゥースペイスト、そして新顔のルンルン。リーダー格のレッドフィッシュは、悪徳実業家の父を持つ背景があり、彼を中心に少年たちはアパートの一室で刹那的な日々を送ります。時には詐欺まがいの行為で金銭を得たり、若い女性を巡って複雑な関係を持ったりと、その生活は無軌道で不安定なものでした。

そんなある日、イギリス人の元恋人マーカスを追って台湾にやってきたフランス人女性、マルトが彼らの前に現れます。土地勘もなく途方に暮れるマルトを見たレッドフィッシュは、彼女を言葉巧みに誘い込み、裏社会の組織に売り飛ばそうと画策します。しかし、グループの中で比較的純粋な心を持つルンルンが、危険を感じたマルトを自身の生家の屋根裏部屋に匿ったことで、レッドフィッシュの目論見は失敗に終わります。

一方、レッドフィッシュは、自身が軽蔑する父親の冷徹な生き方にならい、過去に父を破産に追い込んだ女性、アンジェラへの復讐計画を練ります。ホンコンに彼女を誘惑させると同時に、トゥースペイストを占い師に仕立てて接近させ、金を騙し取ろうとします。

レッドフィッシュの父は行方をくらましていましたが、彼を追う暗黒街の組織は、息子であるレッドフィッシュを誘拐することで父をおびき出そうとします。しかし、手違いからルンルンとマルトが組織のヒットマンに連れ去られてしまいます。機転を利かせたマルトは脱出に成功し、事態は予期せぬ方向へ転がります。レッドフィッシュは逆にヒットマンを掌握し、父の隠れ家へと向かいますが、そこで見たのは、愛人と共に心中した変わり果てた父の姿でした。冷酷非情に見えた父が抱えていた弱さを目の当たりにしたレッドフィッシュは、複雑な感情を抱きます。

物語の終盤、ルンルンはマルトに想いを打ち明けますが、自分を危険な状況に巻き込んだルンルンへの怒りを拭えないマルトは、最終的にマーカスの元へと去っていきます。

キャスト

マルト：ヴィルジニー・ルドワイヤン
ルンルン：クー・ユールン（柯宇綸）
レッドフィッシュ：タン・ツォンシェン（唐従聖）
ホンコン：チャン・チェン（張震）
トゥースペイスト：ワン・チーザン（王啓讃）
マーカス：ニック・エリクソン
アンジェラ：キャリー・ン（呉家麗）
レッドフィッシュの父（チェン）：チャン・クオチュー（張国柱）

他

スタッフ

監督・脚本：エドワード・ヤン（楊徳昌）
製作：ユー・ウェイエン（余為彦）
撮影：リー・イーシュー（李以須）
編集：チェン・ポーエン（陳博文）

（注：上記は主要なキャスト・スタッフのみ記載）

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