エドワード・ヤン

エドワード・ヤン：台湾ニューシネマを代表する巨匠の生涯と作品

エドワード・ヤン（楊徳昌、1947年-2007年）は、台湾を代表する映画監督、脚本家です。彼の作品は、社会風俗や人間関係を繊細に描き、高い評価を得ています。 侯孝賢と並んで、台湾ニューシネマを牽引した重要な人物と言えるでしょう。

1947年、上海生まれ。2歳の時に家族と共に台北に移住しました。幼少期はロック音楽と手塚治虫作品に親しみ、その影響は後の作品にも見られます。国立交通大学で電気工学を学び、その後フロリダ大学で計算機工学の修士号を取得するなど、技術畑の経歴を持っていました。しかし、彼は映画製作への強い関心を抱き、南カリフォルニア大学に入学しますが、中退。その後アメリカでしばらく電気関係の仕事に携わっていました。

1981年、台湾へ帰国。映画界入りは余為政監督の『一九〇五年の冬天』で脚本と製作助手として参加したことから始まります。同年、テレビドラマシリーズ『十一個女人』の一話「浮萍」で監督デビューを果たします。翌1982年には、オムニバス映画『光陰的故事』の一編「指望」で劇場映画監督デビュー。

1983年、初長編映画『海辺の一日』でヒューストン映画祭グランプリを受賞し、その才能は一気に開花しました。その後も、『台北ストーリー』（1985年）、『恐怖分子』（1986年）、『牯嶺街少年殺人事件』（1991年）、『エドワード・ヤンの恋愛時代』（1994年）、『カップルズ』（1996年）と、次々と傑作を発表。その独特な作風で高い評価を受け、台湾ニューシネマを代表する監督として確固たる地位を築きました。

2000年、彼の代表作と言える『ヤンヤン 夏の想い出』でカンヌ国際映画祭監督賞を受賞。この作品は、台湾の現代社会における家族や人間関係を深く見つめた、普遍的なテーマを描いた作品として世界的に高く評価されています。しかし、同時期に癌を患っていた彼は、その後7年に渡る闘病生活を送ることになります。

闘病生活の中でも、ジャッキー・チェン製作総指揮による初のアニメ映画『追風』に着手していましたが、残念ながら完成には至らず、数分間の断片のみが残されたとのことです。また、1990年代半ばには『如果』『成長季節』など、舞台劇の演出も行っていました。

2007年6月29日、結腸癌による合併症のため、アメリカ・カリフォルニア州ビバリーヒルズの自宅で死去。59歳でした。彼の死は、映画界に大きな衝撃を与え、世界中の映画ファンを悲しませました。しかし、彼の残した作品は、これからも多くの人々に感動を与え続け、映画史に燦然と輝く存在であり続けるでしょう。

エドワード・ヤンの主な監督作品

『光陰的故事』(In Our Time, 1982)：オムニバス映画。4人の監督による4つの短編からなる作品。エドワード・ヤンは「指望」を監督。
『海辺の一日』(That Day, on the Beach, 1983)：ヒューストン映画祭グランプリ受賞作。
『台北ストーリー』(Taipei Story, 1985)
『恐怖分子』(The Terrorizers, 1986)
『牯嶺街少年殺人事件』(A Brighter Summer Day, 1991)：台湾の社会問題を鋭く描いた長編作品。
『エドワード・ヤンの恋愛時代』(A Confucian Confusion, 1994)
『カップルズ』(Mahjong, 1996)
『ヤンヤン 夏の想い出』(Yi Yi, 2000)：カンヌ国際映画祭監督賞受賞作。

エドワード・ヤンに関する書籍

エドワード・ヤンの作品や人生を深く知るための書籍も数多く出版されています。代表的なものとしては、『楊徳昌電影読本』、『エドワード・ヤン』（ジョン・アンダーソン著）、『映画芸術 459号 エドワード・ヤンと『牯嶺街少年殺人事件』』、『エドワード・ヤン 再考/再見』などがあります。これらの書籍を通じて、彼の作品世界への理解をさらに深めることができるでしょう。

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