カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ

カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ（COMT）について

カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ、通称COMTは、カテコールアミン類の一種であるドパミンやアドレナリン、ノルアドレナリンの不活化に深く関与する酵素です。この酵素は、1957年に生化学者のジュリアス・アクセルロッドによって発見され、ヒトのCOMT遺伝子によりコードされています。

COMTの機能

COMTは主に中枢神経系と末梢に広く分布しており、さまざまな生理機能に寄与しています。この酵素が行う重要な役割は、カテコールアミンのベンゼン環に接続された水酸基にメチル基を結合させて、これをメトキシ基に変えるという化学反応です。この過程により、カテコールアミンの生理活性が低下し、神経伝達の調整が行われています。COMTは、S-アデノシルメチオニン（SAM）という化合物をメチル基の供給源として利用します。

COMTの触媒反応

COMTによる特異的な反応の例として、以下のような変換が挙げられます：

• - ドパミン → 3-メトキシチラミン
• - 3,4-ジヒドロキシフェニル酢酸（DOPAC） → ホモバニリン酸（HVA）
• - ノルアドレナリン → ノルメタネフリン
• - アドレナリン → メタネフリン
• - ジヒドロキシフェニルエチレングリコール（DOPEG） → 3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニルグリコール（MOPEG）
• - 3,4-ジヒドロキシマンデル酸（DOMA） → バニリルマンデル酸（VMA）

中枢神経系におけるCOMTの役割

中枢神経系におけるCOMTは、シナプス後ニューロンに発現し、カテコールアミンの神経伝達物質の不活化を促進します。特に、ドパミンの分解は前頭前皮質などの主要な部位で重要な役割を果たしています。この酵素は細胞内に存在し、シナプス後ニューロンの機能に寄与していると考えられています。

末梢におけるCOMTの機能

COMTは肝臓や腎臓などのさまざまな組織にも存在し、カテコールエストロゲンやフラボノイドの特定の化合物を基質として利用します。また、医薬品の代謝にも大きな役割を果たしていいます。

COMT阻害薬の意義

カテコールアミンの不活化を担当するCOMTの働きを阻害することで、疾患の治療が試みられています。既に役立てられているさまざまなCOMT阻害薬が開発されており、例えばパーキンソン病の治療に使われるレボドパはCOMTに代謝されることがあるため、末梢でのCOMTの阻害が重要です。エンタカポンなどのCOMT阻害薬は、レボドパを保護し、その脳への移行を助けて、治療効果を向上させる役立ちます。

他にも、フロプロピオンというCOMT阻害薬も存在しますが、これはセロトニンに対しても作用します。フロプロピオンは特定の部位に強い作用を示し、肝胆膵疾患や尿路結石の治療においても用いられます。

まとめ

カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ（COMT）は、ヒトの中枢神経系および末梢で広く機能し、カテコールアミンの代謝に重要な役割を持ちます。そのため、COMTとその阻害薬の研究は、神経系疾患の理解と治療においてますます重要になっています。

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