カトリック聖歌集

カトリック聖歌集

「カトリック聖歌集」（かとりっくせいかしゅう）は、日本のカトリック教会において信仰生活や典礼の中で歌われる聖歌を集めた書籍の一つです。この聖歌集は、1966年1月5日に光明社より初めて世に送り出されました。特に創刊時の仕様として、黒色の表紙とA6判という比較的小型のサイズであったことが知られています。

歴史的経緯

「カトリック聖歌集」の編纂は、それ以前にカトリック教会で広く用いられていた『公教聖歌集』の流れを汲んでいます。『公教聖歌集』は1933年に初版が発行されており、こちらも光明社が刊行を手がけ、カトリック中央書院が発売元となっていました。時代の移り変わりとともに、教会音楽のあり方や信徒の感性も変化したことを受け、『公教聖歌集』の内容を見直し、新たな楽曲の追加や歌詞・楽譜の整備を行ったものが、「カトリック聖歌集」として改訂・改題されて刊行されたという背景があります。これは、第二次世界大戦後における日本のカトリック教会の典礼改革や、日本独自の教会文化の発展とも関連付けられる出来事でした。公教聖歌集からカトリック聖歌集への継承は、日本のカトリック教会における聖歌の歴史において重要な節目となったと言えるでしょう。

内容と特徴

現代の日本カトリック教会で公式に用いられる主要な聖歌集としては、『典礼聖歌』と、この「カトリック聖歌集」が挙げられます。「カトリック聖歌集」の大きな特徴の一つは、いわゆる「讃美歌」として知られるタイプの楽曲が多く収められている点です。これにより、プロテスタント諸教会で歌われている讃美歌集にも同じ旋律の楽曲が見られることがあります。しかし、たとえ同じメロディーであっても、「カトリック聖歌集」に収録されている楽曲は、カトリック教会の教義や典礼、霊性に沿った独自の題名や歌詞が付けられている場合がほとんどです。これは、各教派がそれぞれの神学や伝統を音楽表現に反映させているためであり、単なる楽曲の共有にとどまらない、深い信仰的な違いを示唆しています。収録内容は多岐にわたり、一般的なミサ曲から、教会の暦に合わせた特定の祭日の聖歌、さらには感謝や賛美、祈りといったテーマに基づいた楽曲まで、幅広いレパートリーを含んでいます。これらの聖歌は、信徒たちが集会や典礼において、声を合わせて神への賛美を捧げ、信仰共同体としての絆を強めるための重要な手段として機能してきました。

現代における利用状況

「カトリック聖歌集」はかつて広く歌われていましたが、現代においては、特にミサの中で歌われる機会は減少傾向にあります。その背景には、収録されている楽曲の歌詞が、現代の一般的な言葉遣いとは異なる文語体で書かれているものが多く、現代の信徒にとって理解しにくい、あるいは歌唱しにくいと感じられることがある点が挙げられます。これに対し、現代日本語に則した平易な言葉で書かれた『典礼聖歌』が普及し、多くの教会でミサにおける主要な聖歌集として用いられるようになりました。そのため、「カトリック聖歌集」は、ミサ以外の祈りの集いや黙想会、あるいは個人的な祈りの際に用いられたり、教会音楽の歴史や日本のカトリック教会の歩みを知る上での貴重な資料として扱われたりすることが多くなっています。しかし、長年にわたり多くの信徒に親しまれてきた名曲も少なくなく、特定の教会や共同体によっては、今なお大切に歌い継がれている場合もあります。この聖歌集は、日本のカトリック教会における聖歌の歴史の一端を伝える貴重な文化遺産と言えるでしょう。

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