カドリーユ

カドリーユ（Quadrille）

カドリーユは、4組の男女がスクエア（四角）の形を作りながら踊る伝統的なダンスです。このダンスは、歴史的な背景を持ち、特に上流階級の社交場では人気を博しました。また、カドリーユという名は、同名のトランプ遊びにまで広がっています。

歴史的背景

カドリーユという言葉は、17世紀の軍事パレードに由来しており、最初は4人の騎手が馬と共に作る四角い隊列を示しました。このことから「Quadrille」という名称は、スペイン語の「cuadrillo」（4）やラテン語の「quadratus」（四角）から派生したものと考えられます。

人気を博したこのダンスは、1740年頃には馬なしの形で舞踊されるようになり、やがて複雑な振り付けを持つダンスへと進化しました。1760年頃にはフランスに伝わり、1808年にはイングランドに紹介されると、1813年には広く流行しました。すぐに上流階級の社交イベントで欠かせないダンスとなり、1816年頃には多くの人がカドリーユを踊れるようになっていました。

ダンスは4組のカップルによる活発なもので、カップルたちはスクエアの中心を向いて位置します。中心にいるカップルは「ヘッドカップル」と呼ばれ、残りは「サイドカップル」と呼ばれます。ダンスのフローはヘッドカップルが最初に踊り、次にサイドカップルが反復する形で進行します。元々は2組のカップルから始まった構造も、スクエアを形作るために追加のカップルが加わりました。

ダンス用語とフィガー

カドリーユには多くの専門用語があります。例えば、ダンスのアクションには「ジュテ（jeté）」、「クロスシャッセ（chassé-croisé）」、「プリエ（plié）」、「アラベスク（arabesque）」といったバレエ用語が使われます。また、カドリーユは19世紀にかけて、更に人気を集め、様々なワルツの要素を取り入れたスタイルが見られるようになりました。

当時の舞曲作曲家たちもこの人気に貢献し、カドリーユの魅力が広がっていったのです。このダンスの特徴的な構造は、18世紀のヨーロッパの政治システムに喩えられ、異なる国と新たに同盟を結ぶことを「Stately Quadrille」と呼ぶようにまでなりました。カドリーユは第一次世界大戦まで流行し続けました。

カドリーユの構造

カドリーユは次の5つのパートで構成されています：
1. Le Pantalon（パンタロン） - 2/4拍子または6/8拍子、形式は「ABACA」
2. L’été（夏） - 2/4拍子、形式は「ABBA」
3. La Poule（雌鶏） - 6/8拍子、形式は「ABACABA」
4. La Pastourelle（羊飼いの少女） - 2/4拍子、形式は「ABCBA」
5. Finale（終わり） - 2/4拍子、形式は「AABBAA」

ウィーンのカドリーユでは「La Trénis」というフィガーも含まれることがあります。このように、カドリーユは時代を経ても変化しながら多くの人々に楽しまれてきました。

派生文化

また、カドリーユはフランス語圏の小アンティル諸島では「Kwadril」として知られる派生ダンスも存在します。ポルトガル語圏では「quadrilha」と呼ばれ、ブラジルの「フェスタジュニーナ」といった祭りで今も踊られています。

トランプゲームとしてのカドリーユ

18世紀には、トランプゲームにも「カドリール」という名がつき、4人で2人1組でプレイするものが流行しました。このゲームは、当時人気のあったオンブルというトリックテイキングゲームを元に作られ、ルールはかなり複雑でした。しかし、19世紀末にはこのゲームは廃れてしまいましたが、ジェーン・オースティンの小説『高慢と偏見』には、カドリーユに興じる上流階級のキャラクターが描かれています。

カドリーユは多様な文化的背景を持ち、音楽やダンスの楽しみを通じて人々を魅了し続けています。

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