カナの婚宴 (ステーン)

カナの婚宴

『カナの婚宴』（カナのこんえん、独: Die Hochzeit zu Kana、英: The Wedding at Cana）は、17世紀オランダ黄金時代を代表する画家ヤン・ステーンによって制作された油彩画です。この作品は、新約聖書の「ヨハネによる福音書」（2:1-12）に描かれたイエス・キリストの最初の奇蹟をテーマにしています。本作は、ドレスデンにあるアルテ・マイスター絵画館に所蔵されており、ステーンがこの主題を描いた6点の作品の一つとなっています。

主題の背景

聖書によれば、カナという町での婚礼に、イエス・キリスト、聖母マリア、そして弟子たちが招かれました。この婚礼は1週間続きましたが、途中で用意したワインが底をついてしまいました。ワインが無くなることは、当時の常識から外れた事態であり、主催者は途方に暮れました。そんなとき、イエスはユダヤ人が清めに使用する6つの石の水瓶を見つけ、召使に水を注ぐよう指示します。そして、驚くべきことに、その水はいつの間にか美味しいワインに変わっていたのです。この奇蹟を目撃した弟子たちは、イエスを信じるようになりました。

作品の特徴

ステーンの『カナの婚宴』は、聖書の物語を描きつつも、活気に満ちてユーモラスな風俗場面が表現されています。作品は、葉で作られた花冠の飾られたアーチの下に配置されており、前景に焦点が当たっています。鑑賞者は、まるで階段を上る途中で子供にワインを与えている酔っ払った女性に出くわすような感覚になるでしょう。

中央には給仕の男性が右からやってくる音楽家にワインを手渡す様子が描かれ、そこにキリストの奇蹟が示唆されています。彼らの間には聖母マリアが立っており、彼女の存在はこの場面にさらなる深みを与えています。左側に見える演壇へ通じる別の階段では、赤い光の中にいるイエスが片手を挙げて祝福の身振りをしている姿が目に入ります。

意外なことに、周囲の人々は誰一人として起こった奇蹟に気づいていないようです。ステーンはイエスを構図の中央に配さず、やや奥まった場所に配置することで、鑑賞者自身が婚礼の客の一部になったかのような体験を提供しています。

この作品は、ただの宗教画にとどまらず、観る者にユーモアやひなびた風景を通じて、当時の人々の生活や価値観をも伝えています。

参考文献

• - 『フェルメールと17世紀オランダ絵画展』、産経新聞社、フジテレビジョン、2022年
• - 大島力監修『名画で読み解く「聖書」』、世界文化社、2013年

外部リンク

• - アルテ・マイスター絵画館公式サイト - ヤン・ステーン『カナの婚宴』

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