アルテ・マイスター絵画館

アルテ・マイスター絵画館は、ドイツのドレスデンに位置する美術館で、「古典絵画館」や「古典美術館」とも呼ばれています。ドレスデン美術館を構成する12の美術館の一つであり、ザクセン州が管理しています。この美術館は、15世紀から18世紀にかけての絵画を専門としており、特に17世紀のルネサンス期やバロック期のイタリア絵画、オランダ絵画、フランドル絵画が主要なコレクションとなっています。また、これらの他にもドイツ、フランス、スペインの著名な画家たちの作品も所蔵しており、その質と規模においてヨーロッパ有数の絵画館として知られています。

コレクションの歴史は、16世紀にザクセン選帝侯が自身の「驚異の部屋」を設立したことに遡ります。当初は絵画よりも科学関連の品々や他の芸術作品の収集が中心でしたが、ザクセン選帝侯アウグスト1世とその息子アウグスト2世の時代になって、絵画の系統的な収集が始まりました。

1720年代には、ポーランド王室から多くの絵画が不法にコレクションに加えられました。レンブラントの『黒いベレー帽を被り髭を生やした男の肖像』や『真珠で飾った帽子を被る男の肖像』なども、その際にポーランドから収奪されたものです。1745年にはモデナ公フランチェスコ3世・デステの私有コレクションから、価値ある100枚の絵画が追加され、コレクションは急速に拡大しました。これにより、より大きな収蔵・展示スペースが必要となり、聖母教会の近くに選帝侯居城（シュタールホーフ）が建設され、1747年から絵画の展示が開始されました。

1754年にはラファエロの『システィーナの聖母』がコレクションに加わり、美術館の価値を一層高めました。この作品は、現在でも美術館の最も重要な所蔵品の一つとされています。

第二次世界大戦中、1945年2月のドレスデン爆撃でギャラリーは深刻な被害を受けましたが、絵画は事前に別の場所へ移されており、ほとんどが無事でした。しかし、終戦後ドレスデンがソ連の占領下に入ると、多くの絵画がモスクワやキエフへと持ち去られました。その後、1955年と1956年に絵画は東ドイツへ返還されましたが、一部の絵画は行方不明となったり、破棄されたりしました。美術館は再建工事を経て、1960年に再開館しました。

現在、アルテ・マイスター絵画館には、ラファエロの『システィーナの聖母』、ジョルジョーネの『眠れるヴィーナス』をはじめとするイタリア・ルネサンス絵画の傑作の数々や、フランドル、オランダ、ドイツ、フランス、スペイン絵画の重要な作品が収蔵されており、その質の高さからヨーロッパ有数の絵画館として世界的に知られています。

美術館の建物は、建築家ゴットフリート・ゼンパーの設計により1844年に建設されました。エルベ川近くのドレスデン中心部に位置し、北正面は古典的なテーマ、南正面はキリスト教をテーマにした彫刻が施されています。扉は重厚な木製で、上部にはキューピッドとプシュケが描かれた石のレリーフが飾られています。建物は新古典主義様式で、ギャラリーの南側はツヴィンガー宮殿の中庭に、北側はゼンパーが設計した歌劇場ゼンパー・オーパーに隣接しています。また、ドレスデン城やカトリック旧宮廷教会といった有名な建築物も近くにあります。

2007年5月には、仮想世界Second Lifeに実物のギャラリーを再現した仮想美術館を開設し、デジタル技術を活用した新しい鑑賞方法を提供しています。仮想美術館では、実際の美術館の音声ガイドと同様に、全ての絵画の情報を閲覧できるほか、ショップでグッズを購入することもできます。

アルテ・マイスター絵画館は、その豊かな歴史と優れたコレクション、そして現代的な展示方法を通じて、世界中の美術愛好家を魅了し続けています。

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