カノジョになりたい君と僕

『カノジョになりたい君と僕』（カノジョになりたいきみとぼく）は、漫画家たかせうみ氏によって描かれた、現代を舞台にした恋愛漫画作品です。物語の中心となるのは、トランスジェンダーの男子高校生と、彼を深く理解し寄り添う幼馴染の女子高校生。性の多様性や自己肯定、そして思春期の複雑な感情が交錯する日々を丁寧に描き出しています。この作品は、コミックスマートが運営するウェブコミック配信プラットフォーム『GANMA!』にて、2018年7月24日から2020年8月18日までの期間、毎週火曜日に更新される形で連載されました。単行本としては、アース・スターエンターテイメントより、〈アース・スターコミックス〉レーベルで刊行されています。

物語の概要

物語は、主人公である女子高校生、桜ヶ池ヒメが抱く、幼馴染である米沢アキラへの淡い好意から始まります。しかし、二人の関係は高校進学を機に、新たな局面を迎えます。アキラは、自身の性自認に従い、これからは「女の子」として生きていくという強い決意を固め、セーラー服姿でヒメと共に学校へ通い始めます。

高校という新しい環境で、アキラが直面したのは、トランスジェンダーに対する世間の厳しい現実でした。担任教師や一部のクラスメイトには、多様な性への理解が乏しく、心ない言葉や態度が見受けられます。親しい友人が不当な扱いを受ける様子を目の当たりにしたヒメは、深い憤りを感じます。そして、その感情を行動に移すかのように、翌日からはアキラの両親がかつてアキラのために用意していたという学ランを自ら着用して登校するという、大胆な行動に出ます。このヒメの行動は、アキラへの強い味方であること、そして社会の不理解への静かな反抗を示唆しています。物語は、こうした学校生活での出来事を中心に、二人の関係性の変化や、周囲の人々の反応、そしてアキラ自身の心の揺れ動きを描いていきます。

主要な登場人物

桜ヶ池ヒメ（さくらがいけヒメ）
高校1年生の女子生徒。米沢アキラとは幼い頃からの親友であり、彼に対して特別な好意を寄せています。アキラがトランスジェンダーであることを12歳の時に知ってからも、二人の関係性は変わることなく続いてきました。アキラが「女の子」として生きることを選んだ後も、常に彼を理解し、支えようとします。学校でのアキラへの不理解な態度に対し、学ランを着て登校するという行動で抗議の意思を示すなど、強い意志と愛情を持ったキャラクターです。

米沢アキラ（よねざわアキラ）
高校1年生。ヒメの幼馴染であり、クラスメイトの男子生徒です。自身の性自認が男性ではないことを認識しており、高校入学という人生の節目に「女の子」として日々を過ごしていくことを決意します。セーラー服を着て学校に通い始めますが、周囲の無理解に苦しむこともあります。ヒメの変わらぬ友情と支えを心の拠り所としています。

種野あんず（たねのあんず）
アキラやヒメとは別のクラスに所属する女子生徒。アキラに興味を持ち、関わりを持とうとします。

石山ユッカ（いしやまユッカ）
種野あんずと行動を共にすることが多い女子生徒。校則に縛られない自由な雰囲気を持っており、金髪にピアスを着用しています。

* 佐々木先生（ささきせんせい）
学校の数学教師。ヒメやアキラの直接の担任や副担任ではありませんが、二人のこと、特にアキラの状況を気にかけ、温かく見守ろうとする人物です。

作品が描くテーマ

『カノジョになりたい君と僕』は、単なる幼馴染同士の恋愛模様を描くだけでなく、性の多様性、特にトランスジェンダーというテーマに深く切り込んでいます。主人公アキラの自己肯定への葛藤、そしてそれを取り巻く学校や社会の反応を通して、読者に性のあり方について考えさせるきっかけを提供します。また、ヒメのアキラに対する無条件の受け入れと献身的な姿勢は、真の友情や愛情の形を示しています。周囲の不理解といった困難に立ち向かうアキラとヒメの姿、そして彼らを支えようとする人々との交流を通して、作品は共生や理解の重要性を訴えかけています。

書誌情報

たかせうみ氏による漫画『かのじょになりたい君と僕』の単行本は、アース・スターエンターテイメントの〈アース・スターコミックス〉より刊行されています（2019年8月10日現在）。既刊は2巻です。

1. 2019年4月12日発売、ISBN 978-4-8030-1285-9
2. 2019年8月10日発売、ISBN 978-4-8030-1322-1

本作品は、GANMA!の公式サイトにて、一部が公開されています。

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