カプセル化 (通信)

カプセル化とは

コンピュータネットワークにおけるカプセル化（encapsulation）とは、送信したいデータパケット全体を、別のプロトコルのペイロード（データ部分）に埋め込んで通信する技術です。これは、異なるネットワーク間での相互接続を可能にするだけでなく、プロトコルの変換や通信内容の暗号化にも利用されます。インターネットにおいて標準的に利用されており、現代のネットワーク通信を支える重要な技術の一つです。

カプセル化の仕組み

カプセル化の概念を理解するために、実際に通信を行っているプロトコルを「A」、カプセル化されて運ばれているプロトコルを「B」とします。この時、通信は「B over A」と表現されます。例えば、FTP over TLSは、TLSという暗号化プロトコルで暗号化されたFTP通信を表し、PPP over Ethernet (PPPoE)は、Ethernet上でPPPプロトコルを利用した通信を表します。ここで、「A」は「デリバリプロトコル（データを運ぶ役割）」、「B」は「ペイロードプロトコル（運ばれるデータ）」と呼ばれます。

カプセル化の利点

カプセル化は、モジュール化された通信プロトコルの設計技法であり、上位層のオブジェクトを下位層の構造から隠蔽し、ネットワークにおける論理的に独立した機能を抽象化する役割を果たします。これにより、各層が特定の役割に集中でき、システムの複雑さを軽減できます。また、ネットワーク全体をより柔軟かつ効率的に管理できるようになります。

例えば、物理層はデータの物理的な転送を担当し、リンク層はデータのカプセル化により、LANやIPにおいて各コンピュータにグローバルなアドレスを設定することを可能にします。さらに、UDPなどのトランスポート層プロトコルは、ポート番号を通じてWebサーバやTFTPサーバなどのサービスを指定し、アプリケーションやプロセスを選択することを可能にします。

上位層プロトコルと下位層プロトコル

カプセル化を議論する際、より抽象的な層を上位層プロトコル、より具体的な層を下位層プロトコルと呼びます。ただし、IPプロトコルの上下関係を基準に、上位層プロトコルと下位層プロトコルと表現する場合もあります。カプセル化は、OSI参照モデルやTCP/IPモデルといった、ほとんどのネットワークモデルに共通する特徴です。

カプセル化の応用例

カプセル化は、さまざまなネットワーク技術やプロトコルで利用されています。

トンネリング: VPNなどで利用されるトンネリング技術は、カプセル化を利用してネットワーク上に仮想的な通信路を確立します。
Tor: 匿名通信ネットワークであるTorも、カプセル化を利用して通信経路を隠蔽します。
VoIP: 音声データをIPネットワーク上で伝送するVoIPも、音声データをパケットにカプセル化して送信します。

まとめ

カプセル化は、現代のネットワーク通信において不可欠な技術です。異なるプロトコルを組み合わせることで、柔軟で効率的なネットワークを構築できます。また、プロトコル変換や暗号化といった付加価値を提供し、安全で信頼性の高い通信を支えています。

参考資料

How Encapsulation In The TCP/IP Model Works

関連技術

トンネリング
Tor
* VoIP

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