カヤン民族軍

カヤン民族軍（カヤンみんぞくぐん、ビルマ語: ကယန်းအမျိုးသားတပ်မတော် 、英語: Kayan National Army、略称：KNA）は、ミャンマーに居住するカヤン族によって組織された武装勢力です。特に、カヤン族が多く暮らすカレンニー州などの地域で活動を展開しており、ミャンマー軍事政権に対する抵抗運動の一部を担っています。

起源

カヤン民族軍（KNA）の結成は、2021年2月にミャンマーで発生した国軍によるクーデターとその後の情勢緊迫化が背景にあります。クーデター後、民主的に選ばれた政府が転覆され、全土で軍事政権への反対運動が巻き起こりました。カヤン族が居住する地域でも、多くの人々が自衛や抵抗のために武装を決意し、様々な小規模な抵抗組織が自発的に誕生しました。

KNAは、このように分散して活動していた複数のカヤン族系の小規模武装抵抗グループを統合し、より組織的で効果的な軍事抵抗運動を推進することを目的として設立されました。これは、個々のグループでは限界のある抵抗力を、一つのまとまった組織として強化しようとする試みでした。

KNAの結成にあたっては、カヤン族が居住するカレンニー州を中心に活動する一部のカレンニー族武装勢力から、懸念の声が上がったことも伝えられています。その理由としては、カヤン族が多く暮らす地域には、既に他のカレンニー系の武装抵抗組織が存在し、活動を展開しているため、新たな組織の誕生が地域の抵抗勢力の連携や統一性を損なう可能性が危惧されたことが挙げられます。しかし、KNAの指導部は、既存の抵抗勢力との対立ではなく、協力関係を構築していく方針であることを明確に示しました。また、カレンニー地域の主要な武装抵抗組織の一つであるカレンニー民族進歩党（Karenni National Progressive Party: KNPP）の幹部であるアウンサンミン氏は、KNAの創設が、カレンニー地域全体のレジスタンス活動に大きな支障をきたすことにはならないだろうとの見解を示し、理解を求めています。

他の武装勢力との関係

カヤン民族軍（KNA）は、ミャンマーの民主派勢力が樹立した並行政府である国民統一政府（National Unity Government: NUG）が正統な政府であることを承認しています。これは、軍事政権に対抗する民主的な枠組みへの支持を表明するものと言えます。しかし、KNAは組織として、NUGの国防省の直接の指揮下には属していません。これは、KNAが一定の独立性を保ちつつ、地域における抵抗活動を行っていることを示唆しています。

また、カレンニー州などカヤン族が多く居住する地域には、市民が自発的に組織した様々なローカルな武装抵抗グループ、すなわち国民防衛隊（People's Defence Force: PDF）が数多く存在します。KNAはこれらの地域PDFに対して、自分たちの組織への統合や加入を強制しないという方針を明確に打ち出しています。これは、地域における多様な抵抗勢力の存在を尊重し、それぞれの自主的な活動を認める姿勢を示すものと考えられます。KNAは、国民統一政府（NUG）への支持を表明しつつも、組織的な独立性を保ち、地域の他の抵抗勢力との関係においては、強制ではなく協力や自主性の尊重を重視する立場を取っています。

KNAの今後の活動や、他の武装勢力との連携の進展は、ミャンマーにおける軍事政権に対する抵抗運動全体の行方を占う上で、重要な要素の一つとなるでしょう。

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