カレンニー族

カレンニー族は、ミャンマーを中心とした東南アジアに暮らす主要な民族集団であるカレン族の一分派です。その名称にある「ニー」という言葉は、ビルマ語で「赤」を意味しており、このことから「赤カレン族」と呼ばれることもあります。対照的に、カレン族の中にはスゴー族やポー族のように「白カレン族」と呼ばれる集団も存在し、カレンニー族はしばしばこれらとは異なる集団として認識されています。

民族の出自と構成

カレンニー族は、同じ地域に暮らすカヤー族を母体とする民族集団であると考えられています。そのため、場合によっては「カレンニー」と「カヤー」という呼称が同義で用いられることもありますが、厳密には異なる側面も持ち合わせています。カレンニー族を構成する内部の部族は非常に多様であり、首長族として知られるパダウン族もカレンニー族に属すると言われることがありますが、人類学や言語学の観点からの詳細な解明は、現時点では十分に進んでいるとは言えません。

主な居住地域と歴史的背景

カレンニー族の多くの人々は、ミャンマー連邦の東部に位置するカヤー州一帯を主要な居住地としています。この地はかつてカレンニー州と呼ばれており、カレンニー族の民族的アイデンティティと深く結びついています。歴史的に見ると、彼らが暮らす地域はイギリス植民地時代のビルマにおいて、他の地域とは異なる独立した地位を与えられていました。この歴史的な経緯が、今日のカレンニー族が民族自決や分離・独立を強く求める根拠の一つとなっています。

しかし、長年にわたるミャンマー政府との民族紛争の結果、多くのカレンニー族の人々が故郷を追われ、タイ領へ避難することを余儀なくされました。これらの難民の多くは、カヤー州に地理的に近接するタイ北部のメーホンソーン県などに設けられたキャンプで生活を送っています。

政治運動と紛争

カレンニー族は、彼らの政治的要求を実現するために独自の組織を擁しています。その主要な政治組織がカレンニー民族進歩党（KNPP）であり、これには軍事部門であるカレンニー軍（KA）が付随しています。これらの組織は、前述の歴史的な独立地位を理由に、民族自決権の行使による分離・独立を目指し、ミャンマー政府（特に軍政）と継続的に対立してきました。

ミャンマー政府にとって、カレンニー族の独立を求める動きは大きな脅威と見なされてきました。その政治的な影響力の強さから、政府はカレンニー族の居住地域であるカレンニー州の名称を、政治的色彩の薄い「カヤー州」へと変更するなど、民族運動を弱体化させるための様々な措置を講じてきました。

難民問題

ミャンマー国内で続く民族紛争は、多くのカレンニー族住民に深刻な影響を与えています。戦闘や迫害から逃れるため、多数の人々が国境を越えてタイへ避難し、難民としての生活を強いられています。現在、タイ国内にはカレンニー族をはじめとするミャンマーからの難民を収容するためのキャンプが複数存在し、特にカレンニー難民を主な対象としたキャンプが少なくとも2カ所設置されています。これらのキャンプでは、基本的な人道支援が行われていますが、長期にわたる避難生活や将来への不安といった多くの困難に直面しています。

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