カラスの親指

『カラスの親指 by rule of CROW’s thumb』

この物語は、日本の著名な推理作家道尾秀介によって書かれた小説で、2007年に『メフィスト』誌に連載され、その後2008年に講談社から単行本として発表されました。『カラスの親指』は第144回直木賞の受賞作であり、他にも第30回吉川英治文学新人賞候補や第62回日本推理作家協会賞にノミネートされています。この作品は2012年に映画化され、阿部寛を主演に迎え、さらには2019年に続編『カエルの小指 a murder of crows』が出版されました。

あらすじ

物語の主人公はタケこと武沢竹夫という名のベテラン詐欺師です。彼はもともと真面目なサラリーマンでしたが、妻の病気が悪化し、肝臓の病気で亡くなってしまう悲運に見舞われます。その後、闇金からの取り立てや借金に悩まされることとなり、最終的にはヤクザのヒグチに追い込まれる運命に。善悪の狭間で苦しみながら、タケは経理資料を警察に持ち込むことでヒグチたちを逮捕させるが、報復により自宅が焼かれ、幼い娘を失ってしまいます。全てを失ったタケは自らの命を絶とうと試みますが、うまくいかず、復讐の恐怖から逃げる日々が続きます。

そんなある日、彼は自らの境遇と重なる男、テツと出会います。彼は過去に苦しみを抱えていたため、二人は意気投合しコンビを組むことに。新たな生活を始めたタケとテツは、仲間として助け合いながら日々を過ごしますが、ある日アパートで火事が発生し、新たな一軒家に引っ越すこととなります。そこで出会った若い少女まひろや、彼女の姉やひろ、その恋人貫太郎らと共に共同生活を始めます。

最初は平和に過ごす5人と一匹の猫トサカですが、次第に不穏な空気が漂い始めます。怪しげな車が回りをうろつき、トサカが姿を消す事件も発生。ついには、彼らの過去を悔いるタケが、ヒグチへ復讐を誓うことになります。しかし、彼らが知らなかった真実が、復讐を難航させるのです。

登場人物

• - 武沢竹夫 (タケ): 詐欺師としての顔を持ちながら、内面的には苦悩する人柄を持つ。
• - 入川鉄巳 (テツ): タケの相棒で、共に過酷な運命を乗り越える仲間。
• - 河合まひろ: スリで生計を立てる若い少女で、タケたちと運命的な出会いを果たす。
• - 河合やひろ: まひろの姉で、タケの提案によって共同生活を始める。
• - 石屋貫太郎: やひろの恋人で、失業中の優しい性格を持つ。

映画化と受賞歴

映画版は2012年に公開され、主演の阿部寛はその演技で『第55回ブルーリボン賞』の主演男優賞を受賞しました。また、能年玲奈は新人賞を獲得。映画は結末に至るまでの数多くの伏線を効果的に散りばめており、見る者へ緊張感と感動を与えます。また、Blu-rayやDVDも発売され、豪華版には未公開シーンやメイキングも収められています。

この作品は、単なる詐欺の物語以上の深いテーマを持っており、家族や仲間との絆、人の優しさと裏切りを描いています。道尾秀介の独特な語り口と人間ドラマが織り成す深い世界観は、多くの読者に感動を与えてきました。

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