スリ

スリ（pickpocketing）の概要

スリとは、他人の懐やカバンから金品を不注意に盗み取る行為を指し、その実行者をスリまたは掏児と呼びます。この行為は窃盗の一形態であり、特に街中での犯罪として有名です。「巾着切り」などの別名も存在し、地域によって異なる呼称が用いられることもあります。

行為の分類

スリは犯罪の中でも非侵入盗に分類され、公共の場での混雑を利用して、被害者の気づかないうちに盗む手口が特徴です。国際的にも一般的な犯罪として認知されており、多くの国で個人所有物の窃盗に含まれています。国際犯罪被害実態調査によると、個人が所有している物品に対するスリは、窃盗事件の約3分の1を占めています。

日本におけるスリの歴史

日本のスリの歴史は古く、文禄3年（1594年）の記録には、スリと盗人が区別されていたことが示されています。それ以降、スリの手口や社会における位置づけは変化してきました。特に、江戸時代には巾着切りという専門用語が用いられ、スリが巧妙になり、社会問題として取り上げられるようになりました。

江戸時代中期、スリを取り締まる法律が強化され、手口が巧妙になるにつれ、逮捕されたスリに対する厳しい刑罰が設定されました。多くの者が集団で行動しており、スリ行為が組織化されていたため、警視庁などの捜査機関はこの犯罪に対応するための力を強化せざるを得ませんでした。

明治時代に入ると、スリは都市部に移り、特に東京での活動が目立つようになりました。新宿や池袋など人が集まる場所では、スリ師が挑発的に活動し、警察との関係が深まる中で、さらなる組織の形成が進みました。警察とスリの間での暗黙の了解が存在し、取り締まりが緩かった時期もありましたが、これが犯罪の温床となってしまいました。

スリの現状

近年、日本ではスリの件数は減少してきているものの、依然として警戒が必要な犯罪です。法務省や警察庁の統計によると、スリの認知件数は1979年から1987年にかけて約1万5千件から1万6千件で推移していましたが、経済状況によって変動し、バブル崩壊期には最も多い件数となりました。

2020年には新型コロナウイルスの影響もあり、スリの件数は1442件と減少しましたが、未届けのケースが多いことから、実際にはより多くの被害者が存在すると考えられます。特に若い世代、特に20代女性が被害に遭いやすい傾向が見られるため、注意が促されています。

海外のスリ事情

欧州諸国でもスリは一般的な犯罪であり、特に観光客が多く集まる場所では被害が増加しています。ギリシャやエストニア、アイルランドではスリの発生率が高く、各地の交通機関や観光地でスリ行為が見られます。たとえば、アイルランドのダブリンやスペインの地下鉄では多くのスリが発生しており、観光客が被害に遭うケースが目立ちます。

まとめ

スリは、犯罪の中でも巧妙さが求められる犯罪であり、特に繁華街や公共交通機関など人が集まる場所で活動されることが多いです。被害を防ぐためには、自身の持ち物に注意し、周囲の状況に気を配ることが重要です。スリに関連する情報を正しく理解し、常に警戒を怠らないことが、被害を未然に防ぐ鍵となります。

もう一度検索