カラビニエ

映画『カラビニエ』の解説

『カラビニエ』は、1963年に公開されたジャン＝リュック・ゴダール監督の作品で、フランスとイタリアの共同制作によるものです。この映画は、著名なイタリアのネオレアリズモの監督であるロベルト・ロッセリーニが書いたブレヒトの戯曲に基づいており、ゴダールが新たな映像作品へとアレンジしました。

撮影は1962年の冬から1963年の初めにかけて、パリ郊外のランジスで行われ、1963年5月31日にフランス国内で正式に公開されました。この作品には、ヌーヴェルヴァーグの監督や脚本家たちがキャストとして参加し、視覚的にも因果的にも興味深い映画体験を提供しています。また、映画中のミケランジュを演じたアルベール・ジュロスは、ヌーヴェルヴァーグの名監督であるリュック・ムレの兄弟でもあり、音楽家としても知られています。

ストーリーの概要

物語は、野原に建てられた掘立小屋に住む母クレオパトル、娘ヴェニュス、息子ユリースとミケランジュという4人の人物を中心に展開します。この4人は、外見は同年代の男女に見えますが、実際のところは複雑な人間関係と真実を持っています。

ある日、2人のカラビニエが彼らの元を訪れ、「王様」から届いた召集令状を伝えます。しかし、ユリースとミケランジュは文字を読めないため、召集状の意図を理解することができません。それでも、彼らは王の命令に従って戦争に赴くことを決意します。戦争とは名ばかりですが、彼らは「世界の富が手に入る」といった期待を抱きつつ、行動を起こします。

戦争が終結した後、彼らはトランクいっぱいの戦利品を持ち帰りますが、その中身は大量の絵はがきでした。家族は一様に喜びますが、心の奥には戦争の現実が影を落としていることに気づいていません。しかし、戦が終わった喜びも束の間、敗北した王国の軍隊は戦争犯罪人の処刑を命じ、ユリースとミケランジュは銃殺されてしまう運命にあります。この悲劇的な結末によって、彼らは無邪気に戦争に参加した代償を払うことになります。

主要スタッフとキャスト

本作は、ジャン＝リュック・ゴダールが監督を務め、脚本も手掛けています。共に手を組んだのはジャン・グリュオーやロベルト・ロッセリーニで、視覚的な美しさを追求するために、撮影監督にはラウール・クタールが選ばれました。音楽はフィリップ・アルチュイが担当し、作品全体に独特な雰囲気を創出しています。この映画には、マリノ・マッセ、アルベール・ジュロス、ジュヌヴィエーヴ・ガレア、カトリーヌ・リベイロといった俳優たちが出演し、各々が重要な役割を果たしています。

影響と関連作品

1990年には、ゴダールがオムニバス映画『子どもたちはどうしているか』の中で『芸術の幼年期』を監督し、そこには『カラビニエ』のシーンが引用されるなど、彼の作品の特徴的なスタイルを引き継いでいます。さらに、2006年には『レフューズニクたちへの祈り』という短篇の連作を発表し、本作の若きコミュニストの女性が処刑されるシーンを再利用しています。このように、映画『カラビニエ』はジャン＝リュック・ゴダールいわく、戦争とその後のトラウマを描く重要な作品として位置づけられています。

この映画は、シニカルな視点や現実への批判を交えながら、観客に深く考えさせる作品となっており、その視覚的な表現やストーリーの構成から、ゴダールの映画の中でも特異な地位を占めています。

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