カリナリー・インスティテュート・オブ・アメリカ

カリナリー・インスティテュート・オブ・アメリカ (CIA)

カリナリー・インスティテュート・オブ・アメリカ（The Culinary Institute Of America、略称：CIA）は、アメリカ合衆国を拠点とする私立の非営利専門大学です。料理芸術学（Culinary Arts）分野において、短期大学士、学士、そして修士の学位取得が可能な高等教育機関として知られています。その設立目的は、世界最高レベルの専門的な料理に関する知識と技術教育を提供することにあります。絶えず変化する外食およびホスピタリティ産業界で成功を収めるために不可欠な、幅広い教養と実践的なスキルを学生に身につけさせることを使命として掲げています。多様性を尊重し、教育における挑戦と卓越性を追求する文化の中で、学生、教職員、運営スタッフ全てのニーズに応えることを目指しています。

沿革

本学は、第二次世界大戦後の退役軍人に対する職業訓練の必要性から誕生しました。1946年、フランセス・ロスとキャサリン・アンジェルの両氏により、コネティカット州に「ザ・ニューヘイブン・レストラン・インスティテュート」として設立されたのが始まりです。当初の学生数は約50名でした。その後、1952年に現在の名称である「カリナリー・インスティテュート・オブ・アメリカ」に改称されました。教育内容は発展を続け、1971年には全米で初めて、料理学校において短期大学士号（Associates in Occupational Studies）の取得が可能となりました。そして1972年、約1,000名の学生と共に、現在のニューヨーク州ハイドパークにある元修道院の広大な敷地に移転し、教育規模を拡大しました。近年では、2017年に日本の旭酒造と提携し、ニューヨークに日本酒の醸造所を建設する計画を発表するなど、その活動範囲を広げています。

キャンパス

CIAはアメリカ国内に複数のキャンパスを展開しています。中心となるニューヨーク本校（ハイドパーク）は、料理分野では世界で唯一、4年制大学の学士号が取得できる寄宿制の教育機関であり、約3,000名の学生が学んでいます。その他、カリフォルニア州のセントヘレナ（グレイストーン分校）やナパ、テキサス州のサンアントニオにも分校があります。また、アメリカ国外では、シンガポールのシンガポール工科大学内にもキャンパスを構えています。

教育プログラムと目的

本学では、2年制と4年制のプログラムで調理技術と製菓製パンの分野を学ぶことができます。これらに加え、プロフェッショナル向けの継続教育プログラム（CEプログラム）や修士課程も提供しています。学位プログラムは、各レベルに応じた明確な教育目標を設定しています。

2年制の短期大学士課程では、志の高い料理人を対象に、調理の基本的な技術を実践的に指導します。食品の知識、構成要素、栄養学への理解を深め、現場で求められる専門スキル、機器の適切な使用法や保守方法を習得します。また、基本的な監督能力や、業務用厨房のレイアウト、ワークフローに慣れることも重視されます。さらに、国際的な調理技術の多様性や歴史を学び、プロフェッショナリズムを磨くとともに、フードサービス関連の一般教養を通じてグローバルな視点を養います。

4年制の学士課程では、2年制で培った知識・技術に加え、より高度な内容をカバーします。金融や経済が外食産業に与える影響を理解し、複雑な現代経済における企業経営に役立つスキルを習得します。効果的なコミュニケーション能力、スタッフの管理やモチベーション維持、ストレス対処法なども学びます。PCを活用した業務効率化や、調理・経営に関するリサーチ手法もカリキュラムに含まれます。また、新しい調理法や多様な食文化、珍しい料理スタイルを探求し、将来的なキャリア選択肢を広げ、雇用主へ効果的にアピールする方法を身につけます。

修士課程では、食品ビジネスやワイン・飲料管理など、専門分野における高度な知識や経営能力を深めます。一部のプログラムはオンラインでの受講も可能です。

継続教育プログラムは、現役のプロフェッショナル向けに、特定のテーマに沿った短期講座や、企業・団体の要望に応じたカスタマイズプログラム、コンサルティングなどを提供しています。

CIA独自の教育

CIAの教育体制は、その実践志向と厳格さによって特徴づけられます。クラスサイズは、教員一人あたり最大18名という方針に基づき、少人数制が徹底されています。授業は午前と午後のクラスに分かれており、同時期に入学する学生数は72名単位で管理されています。カリキュラムは3週間を1ブロックとするブロック制を採用しており、3週間ごとに新しい科目に進み、同時に新しいクラスが入学し、上のクラスが卒業するというサイクルが繰り返されます。同時期に入学した学生は、2年制プログラムであれば21ヶ月間を基本的に同じメンバーで進級していきます。

このブロック制のカリキュラムにおける進級試験は大変厳格です。遅刻は一切認められず、どんな理由であれ1ブロック内で2日以上欠席すると落第となります。落第した場合、追加の授業料を支払って再履修となりますが、クラス人数が限定されているため、再履修を希望するブロックのクラスに空き（他の学生の落第など）が出るまで待たなければならない場合があります。教育は、通常教室での理論学習と、実践的な厨房での実習を組み合わせた形で行われます。例えば、座学で肉の部位や用途を学んだ後、次の授業では実際に肉を解体する実習を行います。

カリキュラムは、単なる調理技術にとどまらず、経営学、原価管理といった基本的なマネジメント知識から語学まで多岐にわたります。店舗開発を想定したプロジェクトでは、マーケティング、設計、収支計画といった開業に必要な実践知識を習得します。

教育の一環としてのレストラン運営

ニューヨーク本校では、複数の飲食施設（リストランテ・カテリナ・ディ・メディチ、エスコフィエ・レストラン、アメリカン・バウンティ・レストラン、セントアンドリュース・カフェ、アップルパイ・ベーカリーカフェ）を一般に開放しており、これらは全て学生の授業の一環として運営されています。これらのレストランは、外部の料理評論家からも高く評価され、常に予約で満席となるほどの人気を博しています。ナパバレーの分校にも同様のレストラン（ワイン・スペクテーター・グレイストーン・レストラン）があります。

必修のエクスターンシップ

2年制の短期大学士プログラムでは、最低18週間（通常21週間）の外部研修（エクスターンシップ）が必修となっています。学生は学内の就職課を通じて希望する研修先を見つけ、応募します。研修先の責任者には、学生の評価に関する詳細な書類提出が義務付けられています。また、エクスターンシップは学生のプロ意識育成を目的としているため、必ず給与を受け取って働くことが前提とされており、無償での研修は認められていません。

このように、CIAは厳格で実践的な教育を通じて、外食・ホスピタリティ産業界の未来を担うプロフェッショナルを育成し続けています。

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