カリモク家具

カリモク家具株式会社

カリモク家具株式会社（KARIMOKU FURNITURE INC.）は、愛知県知多郡東浦町に本社を置く、日本の主要な家具メーカーです。主に家庭用家具の製造から販売までを手がける家具・インテリア分野の企業であり、特に木製家庭用家具の分野においては、国内最大手の地位を確立しています。その歴史は古く、2017年度には年間売上高が約232億円に達するなど、堅調な経営を続けています。

沿革

カリモク家具の源流は、1940年（昭和15年）にまで遡ります。初代社長となる加藤正平氏が愛知県碧海郡刈谷町（現在の刈谷市）で木工所を興したことに始まります。戦後の1947年（昭和22年）2月には、この木工所を法人化し、刈谷木材工業株式会社が設立されました。

創業初期は、自社ブランド家具の製造ではなく、外部からの依頼に応じた木製品の製造が中心でした。1949年（昭和24年）には、輸出用の紡織機梱包函の製造を手がけ、1951年（昭和26年）には、特に高度な木工技術が求められるミシンのテーブル部分の製造なども請け負いました。この時期に、アイシン精機（現在のアイシン）、河合楽器、三洋電機（現在のパナソニック）といった異業種からの精緻な木製品製造の要求に応える中で、現在の同社が誇る高い木材加工技術の基礎が培われたと言えます。

1957年（昭和32年）には、木工技術をさらに発展させるための製材・木取工場や乾燥室といった設備投資を拡充しました。1959年（昭和34年）からは、輸出向け家具の木製パーツ生産を開始。そして、下請けで培った技術力と経験を活かし、1962年（昭和37年）に満を持して自社製品としての国産家具の生産・販売に乗り出しました。これが「カリモク」ブランドの誕生に繋がります。

家具販売体制を強化するため、1964年（昭和39年）にはカリモク家具販売株式会社が設立されました。1973年（昭和48年）には、本社敷地内に製品を実際に体感できるショールームをオープンし、消費者との接点を設けました。1983年（昭和58年）には、海外の家具様式を取り入れた高級ブランド「ドマーニ（Domani）」を発表し、新たな顧客層を開拓。

21世紀に入ると、海外展開も積極化します。2005年（平成17年）にはケルン国際家具見本市など、海外の見本市への出展を開始しました。2009年（平成21年）には、先進的なデザインと独自の製造技術を融合させたブランド「Karimoku New Standard」を立ち上げ、国内外で注目を集めます。

企業体制の再編として、2010年（平成22年）に刈谷木材工業株式会社とカリモク家具販売株式会社が統合され、現在の法人であるカリモク家具株式会社が設立されました。その後もブランド展開は続き、2019年（平成31年）には建築空間全体を視野に入れた家具設計を特徴とするブランド「Karimoku CASE」を発表。

さらに、外部とのコミュニケーションやブランド発信の拠点として、2021年（令和3年）に東京都西麻布に「Karimoku Commons Tokyo」を、2023年（令和5年）には京都に「Karimoku Commons Kyoto」を開設するなど、多角的な事業展開を進めています。

事業の特徴と強み

カリモク家具は、単なる家具メーカーではなく、木材の選定・加工から製品の製造、販売までを一貫して行う体制を強みとしています。製品開発においては、過去の下請け時代に培われた精緻な木工技術を基盤としつつ、生体工学や最新の科学技術も積極的に導入しています。これにより、単に美しいだけでなく、使う人の体に寄り添うような使いやすさや、厳選された素材の特性を最大限に活かした、質の高い製品を生み出しています。手仕事による丁寧な仕上げも、製品の耐久性と美しさを支える重要な要素です。

主な商品とブランド

同社は多岐にわたる家庭用家具を取り扱っています。主な商品カテゴリには、ソファー、テーブル、チェアー・スツール、テレビボード、シェルフ・収納家具、デスク・机、ベッドなどがあります。

展開するブランドも複数あり、主力ブランドである「Karimoku」をはじめ、普遍的なデザインを特徴とする「カリモク60」、建築との親和性を追求した「Karimoku CASE」、実験的で先進的な「Karimoku New Standard」などがあります。他にも「MAS」「Domani」「Chitano」「Direttore」「Karimoku CAT」といったブランドを展開し、多様なニーズに対応しています。

グループ体制と販売方法

カリモクグループは、資材、製造、販売の三つの部門からなる計11社で構成される企業グループです。これにより、原材料の調達から最終製品の顧客への納品まで、グループ内で連携しながら効率的かつ品質を管理された事業運営を実現しています。

製品の販売に関しては、独特の体制をとっています。全国に設置されている「カリモク家具ショールーム」は、製品の展示・体感を主な目的としており、その場での直接的な小売販売は行っていません。一般の消費者がカリモク家具の製品を購入する際は、同社の販売部門から紹介される全国の家具小売店を通じて注文する形が基本となります。また、ショールームなどで不定期に開催される「カリモク販売会」は、同社と取引のある家具店やハウスメーカーなどが主催するイベントであり、これらの機会を通じて購入することも可能です。

関係者

漫画家の窪之内英策氏は、かつてカリモク家具の社員であり、工場で勤務していました。彼の代表作である漫画『ツルモク独身寮』は、このカリモク社員時代の経験や、社員寮での生活を基にして描かれています。1988年から1991年にかけて「ビッグコミック・スピリッツ」で連載され、1991年には実写映画化もされましたが、この映画製作にはカリモクグループが協賛しています。

カリモク家具は、長い歴史の中で培われた木工技術と、常に新しい技術やデザインを取り入れる革新性を融合させながら、日本の家庭に高品質な木製家具を提供し続けています。

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