カルシトニン遺伝子関連ペプチド

カルシトニン遺伝子関連ペプチド (CGRP) の概要

カルシトニン遺伝子関連ペプチド (CGRP) は、中枢神経系や心臓、血管などの末梢神経に広く分布する37アミノ酸から成るペプチドです。CGRPはカルシトニン遺伝子の選択的スプライシングによって生成され、主に2つの異性体、すなわちαCGRPおよびβCGRPがあります。αCGRPは末梢の感覚神経に関連しており、特にAδ線維とC線維に見られます。一方で、βCGRPは主に腸の神経系に存在しています。

CGRPの主な機能の一つは、受容体を介して細胞内のcAMP（環状アデノシン一リン酸）を増加させることで、血管の拡張や心拍数の低下、さらには心筋の収縮力の増大を引き起こすことです。このような作用は、特に炎症反応に関連しており、軸索反射によりCGRPが放出された際には、皮膚の紅斑（フレア）が見られることがあります。この特性を利用して、鍼灸治療で体質改善を目的としたアプローチが行われています。

また、片頭痛の発生にもCGRPは関与しています。具体的には、三叉神経末端が刺激されることでCGRPが分泌され、血管が拡張することによって片頭痛発作が引き起こされると考えられています。これに関連した研究が進められ、片頭痛の急性期治療にCGRP受容体拮抗薬が効果的である可能性が示唆されています。実際、2018年には米国でこの「抗CGRP抗体」と呼ばれる新しいタイプの治療薬が承認を受け、2021年には日本国内での臨床試験を経て、販売が開始されました。

抗CGRP抗体とその効果

抗CGRP抗体は遺伝子組換え技術を用いて生成されたCGRPに対する抗体で、片頭痛の発症を抑えるための治療薬として注目を集めています。代表的な製品には、ガルカネズマブ（エムガルティ）があり、これは皮下注射によって投与されます。この治療薬は2021年4月26日に日本で承認され、その後も他の製品が続々と登場しました。同年の8月にはエレヌマブ（アイモビーグ）やフレマネズマブ（アジョビ）が市場に出回り、片頭痛治療の選択肢が広がっています。

これらの治療法は、片頭痛の発作回数やその重症度を軽減することが期待されており、患者にとっては新たな希望となっています。CGRP受容体拮抗薬は、従来の片頭痛治療薬に対しても異なる作用メカニズムを持つため、複数の選択肢を持つことは患者のQOL（生活の質）を向上させる重要な要素となります。

まとめ

カルシトニン遺伝子関連ペプチド（CGRP）は、身体の多くの生理機能にかかわる重要なペプチドです。今後の研究や臨床の進展により、特に片頭痛治療における新たな治療法としての可能性が広がっていくことが期待されます。

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